2014年6月 8日 (日)

映画「ディス/コネクト」の衝撃

ネット問題を扱った映画「ディス/コネクト」を見てきた。出色の出来である。カオル的には、今年上半期のナンバーワン・ムービーに推したい。
言っておくが、この映画はまったくスカッとしない。見に行ったのはガンダムUC最終話の上映で盛り上がる横浜のシネコンだった。だが、お祭り騒ぎのアニメファンを横に、この映画を見終わった観客はみな硬い表情で席を立ち、足早に劇場を去って行った。
そういう映画である。
そう、胸に重い課題をもらって家に帰る、そういうたぐいの映画なのである。ベクトルはまったくちがうが、コッポラの地獄の黙示録を見終わったあとのような、名付けようのない感情を抱えることになるのである。

http://dis-connect.jp

この映画は3つのストーリーが重層的に進行する。
ポルノ・チャットで稼ぐ未成年の少年とそれを追う女性ニュースキャスター。
ネットいじめに遭う孤独な少年とその家族。
ネット詐欺の犯人を捜す、絆の壊れかけた夫婦。
キーワードは、インターネット。
別々の3つの物語が別個に進行し、ラストで一気に重なっていく。

Disconnect01

それぞれの物語にサブテーマがあり、サブ・サブテーマがあり、挿話的なエピソードが挟まる。
どの部分を切り取っても深みがあり、ひとつひとつが考えさせられる。

メインになるのはネットいじめの被害に遭う内向的な16歳の少年の話だ。
シガー・ロスが好きな彼はfacebookで見知らぬ少女からフレンド申請をもらうが、それは彼を生け贄に仕立てようとする悪ガキのいたずらだった。
自分と同じ悩みを持つ同志と信じた彼は、少女の正体が悪ガキとも知らず、言われるがままに自分の裸の写真を相手に送る。そしてそれはクラス中にばらまかれ、彼の心はたとえようもなく傷つけられる。
ちなみにこのシーンの描写がとてつもなく上手い。たった一粒の涙で、少年の心が粉々に砕かれるのをよく表している。抑制の効いた演出とはこういうことを言うのだろう。

インターネットは便利なツールだ。
ぼくもこうしてネットで自分を表現できる。ネットを通じて、会ったこともない人と交流ができる。世界中の人たちとコミュニケートできる。
でも同時に、ネットはあまりにも急速に発達したため、ぼくたちはまだその使い方を知らないのだとも思う。
スマホを使って、いまやぼくたちはどこでも写真や動画が撮れる。
バスルームでも、トイレでも、レストランでも、いくらでもプライベートな写真が撮れる。そしてその気になれば、それを瞬時に世界中にばらまくことができる。
それはときに、決定的に他人を傷つけることも可能だ。
世界中の誰とでも手軽にコミュニケートできると言うことは、見知らぬ誰かを傷つけることも容易だと言うことだ。

映画の中のネットいじめは、日本ではあまり起こりえないタイプのように思う。
むしろLINEの既読無視や、ティーンエイジャーがアイスケースの中に入った写真をばらまいた炎上事件のような、より同調圧力を基盤にしたタイプが多い。
Twitterはバカ発見器とネットでは言われている。たしかに炎上した事件は、どれもとても高尚とは言えない。でも、一時の若気の至りが全世界に発信され、ネットの世界に永遠に記録される。
それってどうなんだろう?名前も住所も特定され、学校に匿名の電話やメールが入り、まとめサイトに写真も名前も残り続ける。誰とでもつながれる便利なツールは、そうやって誰かの人生を追い詰めるための使うものなんだろうか?

ディス/コネクトは、「ネットは良くない」というような単細胞な映画ではない。
人と人がつながるとはどういうことなのか?
人が誰かを求めると言うことは?リアルとネットはどうちがうのか?
少年は、自分が愛し、こころを託した相手の正体を知り、命を絶とうとする。それくらい彼は孤独で、誰かを求めていたんだと思う。
ネット詐欺被蓋の夫婦もポルノチャットの少年も、奥底にあるのは孤独感であり、誰かとつながりたいという人間の本能だ。
その感情がある限り、インターネットは今後も広がり続け、成長し続けるだろう。そしてぼくたちが想像もしない形で、新たに傷つく人たちを生み出すだろう。
20年前には想像もつかなかった世界にいるんだと感じる。
ぼくたちがいま住んでいるのはユートピアなんだろうか、それともディストピアなんだろうか。

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2013年5月15日 (水)

デンゼル・ワシントン「フライト」Blu-ray&DVD発売に

しつこく紹介してきたデンゼル・ワシントン主演のアルコール依存症映画「フライト」がDVDになります。2013年7月19日発売。価格はAmazonで¥3,533円。

Amazon.co.jp: フライト ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]: デンゼル・ワシントン, ドン・チードル, メリッサ・レオ, ジョン・グッドマン, ケリー・ライリー, ロバート・ゼメキス: DVD


Blu-rayとDVDのダブルパックです。どういうコンセプトのセットなんだろう。Blu-rayプレイヤーを持っている人はDVDディスクはいらないし、DVD環境の人はBlu-rayディスクは不要。一枚は人にあげろってことなのかしら。自助グループの仲間と分けあえってことなのかしら。
よく分からないけど、早いタイミングでのディスク化はうれしい。もし当ブログでフライトに興味を持った方がいれば、ぜひ見ていただきたい。


・・・と思ったら、DVDだけのバージョンもあるんですね。

http://www.amazon.co.jp/dp/B00B2DUVRQ/ref=pe_epc_td2

こちらは¥3,050円。価格差483円。うーん。ダブルパックの方があきらかにオトク・・・。

それにしてもDVDが出るのが早くなったものだ。一昔前だったらロードショー終了から1年くらいはふつうだった。フライトのロードショーが終わったのが4月。わずか3ヵ月、スピードDVD化である。
考えてみたら、話題性があるうちにDVD化した方がいいに決まってる。ハリウッド映画は毎年、次々に大作が押し寄せる。1年も経てば、次の話題作、その次の話題作で人びとの頭はいっぱいになっている。みんなの記憶にあるうちにディスク化しておく方が売れそうだ。

7月の発売が楽しみです。
リリースされたらすぐに見なくっちゃ。いちど棚にしまってしまうと手が伸びなくなるもんね。

新作発売、即購入→棚の肥やし→未見のうちにスカパー放映

何度このパターンで泣かされたことか。ガンダムUCとか。バッドマンとか。ま、スカパーで放映されたからといって作品やディスクの価値が下がるわけじゃないんだけど、何となく損した気持ちになる。ふしぎなことに。
後悔しないようAmazonから届いたらすぐ、不退転の決意、鉄の意志でみるべし。

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2010年10月 5日 (火)

アル・パチーノにメロメロ

きょうはスカパー!HDで録画したカリートの道を見ていた。
昔、映画館で見たんだけど、細かいところを忘れちゃってたんだよね。
でもラストシーン、バハマの海岸の美しい映像は記憶に残っていた。

感想。
アル・パチーノ。ムチャクチャかっこええじゃん。
ウィキで調べてみたら、この映画の時50代じゃないの。なにこのイケメンぶり。カッコイイぶり。
ヒロイン役(おそらく20代か)とのからみも、ゼンゼン不自然じゃない。
カラダもたるんでないし、アクションもバッチリ。
つか、アル・パチーノが革のロングコート着てサングラスして歩いている映像だけで、すごくカッコいい。
ああ。ぼくもこんないかすオヤジになりたいものです。

しかし、昔から「こんなオヤジになりたい」的なことを言ってきたが、気が付いたらだんだんオヤジと言われる歳に近づいてきている。
いまだにアル・パチーノにも布施明にも近づく気配なし。
ムツゴロウ王国のムツゴロウさんにだけ、近づいている気がする。
うーむ。いかん。
いまからでもアル・パチーノをめざすのだ。人生、目標を持つのに遅過ぎると言うことはないのだ。
無精ヒゲに長髪。革のロングコート。これですよこれ。
しかし、一歩間違えると痛い人になってしまうので要注意だ。
うおーしまずは金のブレスレッドとごつい指輪からだ!

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2010年2月 7日 (日)

アバター3Dでフェティシズムを知るの巻

アバター3Dを観てきました。
いや面白かった。最初は違和感のあった3D映像も、慣れてくると問題なし。
テーマはエコロジーであったり米国の軍事介入に対するアンチテーゼであったり、ま、いろいろなんですが。

いや、ヒロインのナヴィ族の娘さん。ネイティリちゃん。
この方がいいのよ。エロっちいのよ。
貧乳&マイクロビキニのマニアにはたまらん映画かと。
萌え。ネイティリちゃん萌え。
ジェームズ・キャメロン監督はフェティシズムが分かってらっしゃるお方とお見受けした。
この映画、さまざまに日本のアニメの遺伝子を受け継いでいると思うんだけど(攻殻機動隊とかナウシカとかね)、萌え要素もちゃーんと押さえてある。
それもありきたりな萌えではなく、スレンダー貧乳&マイクロビキニ萌え、と言うかなりツウなライン。
やるなキャメロン。侮りがたしキャメロン。オタクの鏡だぜキャメロン。
いずれフィギアも多数出てくるでしょうから、この萌えセンスを上手に反映してほしいものです。

しかしこんな感想しか出てこない自分にちとガッカリ。。。

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2009年10月18日 (日)

ヴィヨンの妻、感想

ヴィヨンの妻、見てきました。
おもしろかった。
浅野忠信が情けなくてかっこ悪くてかっこいいのと、松たか子がきれいなのと、戦後の東京の風景がきもちいいのと、いろいろ。
これはね、もう全てのアディクトさんとその家族が見るべきでしょう。
太宰治の「ヴィヨンの妻」映画化ってだけでワクワク。
根岸吉太郎は、忠実に、淡々と、自己愛におぼれるアル中、太宰治の姿を描ききっていました。

破滅的な作家に翻弄されつつも明るくけなげに生きる妻の姿、愛。
そう言う見方もあるでしょうが、典型的なアル中さんの共依存パターンでもある。
夫が浮気相手と逃避行した挙げ句に心中未遂をやらかしても、迎えに行ってあげて、弁護士を頼んで獄中から救い出す妻。
さすがにキレかける妻に「勝手なことを言うようだが、いまは責めないでくれないか」とホントに勝手な台詞を口にする主人公。
妻は夫の尻ぬぐいを延々と続け、夫が盗みを働いた飲み屋で女給として働き、借金を返す。
でもそのうれしそうなことと言ったら。
この妻を「それでも明るく生きる女性」とか「けなげな夫人」という見方もあるでしょう。
でもねー、共依存って楽しいのよ。気持ちいいのよ。
「あの人はダメなひとだから、私がこうしてあげなくっちゃ」って世話焼きするのは、快楽なのよ。
主人公(ほぼリアル太宰治)が回復できずにアディクションざんまいでいるのは、奥さんが尻ぬぐいしてくれるのと、この奥さんの気丈さ、私がやってあげてるのよ感にプレッシャーを感じるからなのよ。

監督の意図はともかく、共依存パターンを描ききった、アディクション業界の新テキストとなりうる映画だと思う。

しかしこの映画。
この太宰像。
20代前半から30代くらいの自分とあまりに相似形で、笑ってしまった。
自己憐憫と破滅願望。繰り返す自殺未遂。
酔いから醒めるたびに延々と続く生に倦み飽きて、また破滅を求めて酒におぼれていく。

太宰が果てしなくふらふら、ふらふらしながら酒に酔い、自己憐憫の台詞を吐き続けるのは、ほんとうにもう、昔の自分を見ているようだった。

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2009年8月27日 (木)

サマーウォーズは楽しい映画

サマーウォーズ見てきました。
とても楽しい映画でした。
元気が良くて懐かしくて,甘酸っぱくて。
宮崎アニメでもなければ押井・庵野のようなシリアス系でもない。
わかりやすく、楽しく、すかっとするアニメ。
そうそう、アニメってこういうモンだった。
泣いたり笑ったり、荒唐無稽でオーバーアクションで。
とにかくリクツ抜きで楽しい映画でした。
もう一回見に行きたいな。

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2009年8月 7日 (金)

NHK、YOU再放送、忌野清志郎

きのうは職場の盆踊り大会。
終了後、部署に戻ってなにげにテレビを付けたら。
おおおッ!NHKでYOUの再放送をしているッ!
YMOの3人,糸井重里。な、なつかし・・・。
調べてみたら、なんと3夜連続で再放送している。
きょうが最終回。ゲストはRCサクセション。
これは見逃すわけにはいかない。
きょう8月7日夜8時、NHK教育テレビ。

NHKオンライン|ETV50 YOU RCふたたび

今年5月に亡くなった、忌野清志郎さん率いるRCサクセションが出演した「YOU」を再放送する。
1983年元日、「YOU 特集 わんさか、わんさか ヒーローいっぱい!」に出演し、当時視聴者から再放送の希望が多かったRCサクセションのスタジオライブとこの年の8月の箱根でのライブコンサートの模様を中心に、忌野清志郎さん・仲井戸麗市さんと司会・糸井重里さんとのスタジオトークが楽しい。

1983年,ぼくは15歳。受験を控えた正月にこの番組を見たような記憶がある。
うーん楽しみだ。
きのうのYMOでは、お客さんや糸井氏の服装などもいかにもエイティーズって感じで懐かしかった。
そうそう、肩にセーターやトレーナーを羽織るのがオシャレだったんだよね。
ボートハウスのトレーナーがマストアイテムだったあのころ。
今夜のRC版も楽しみだ。

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2009年6月 4日 (木)

重力ピエロ

話題の映画「重力ピエロ」を見てきた。
伊坂幸太郎原作は、以前「アヒルと鴨とコインロッカー」と観たことがある。仙台の風景を巧みに取り入れた、リリカルな佳作だった。
今回もその路線だろうと思って見に行ったが、良い意味で期待を裏切られた。
傑作ですね。
家族愛とか兄弟愛とか言うと陳腐だけど、人の業や苦悩と言った普遍的なテーマを適度にリアルに、適度におとぎ話っぽく描いている。
カメラがまたいいんだ。仙台の町並みをきれいに撮っている。フィルムの質感がノスタルジックでリリカルで、たまらなくいい感じ。
小日向文世のお父さん役が最高。この映画の何とも言えない暖かみや風格はこのお父さん役によるところが大きいと思う。
原作は未読だけど、伏線てんこ盛りで飽きない。はらはらドキドキのストーリー展開。

ちょっと前に観たおくりびとよりも断然良かった。
主人公兄弟の魅力と悲しさにノックアウトされました。
演技もカメラも脚本も演出も見事。
この映画は賞を取るべきでしょう。
きちんと評価を受けて後世に残すべき映画だと思いました。

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2009年1月 6日 (火)

劇場版グレンラガン・紅蓮編を見てきた

見てきました。映画版グレンラガン。
上京した際に見ようと思っていたが、ついにタイミングが合わずDVD待ちかとあきらめていた。
まさか東北でも上映するとは思っていなかった。いやめでたい。うれしい。
きょうはうちの支社によく来ているW氏と待ち合わせ。彼もグレンラガンファンである。上映1時間前に劇場に行ったら、ほぼ同時に彼も到着。
待っている間、しばしアニメ話で盛り上がる。
やっぱグレンラガンはわれわれ世代に対するエールだとぼくは思うのです。
孤独と閉塞を打ち破り、未来を指向せよ。と。
過去は過去で大事にしながらも、先に進まないと。
アニメを見て、あああの主人公かっこいいな、あんな風になりたいなと思わせるような。
小難しい内省的な作品じゃなく、からっと明るい冒険活劇。われわれ希望を見失いかけているガンダム世代へのメッセージじゃないかと思うんです。

そんな話をしているうちに灯りが落ち、上映が始まる。

いやはや。
期待を裏切らないできばえでしたよ。
オープニングでロージェノムと螺旋族の戦いの歴史が語られる。テレビ版と同様に物語終盤の伏線が語られると思ったので、ちょっととまどう。
が、本編が始まるとすっかり弾き込まれる。
カミナやヨーコやシモンが動いているだけでわくわくする。
物語のおもしろさ、演出、作画、どれをとっても一品なり。
テレビ版と同じく獣人族制圧までが第一部かと思ったら、四天王編まで。
四天王との決戦は、各個撃破ではなく総決戦。
テレビ版以上にドラマチックで、シモン、カミナの生き様がくっきりと描かれていました。

ドラマチック。かっこいい。主人公たちの生き様にあこがれる。
単純に、彼らが泣いたり笑ったりじたばたしている姿に共感する。
楽しい作品でした。すでに今年度見た映画ナンバーワンの予感。
後編が待ち遠しいぜ。

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2008年9月 8日 (月)

スカイ・クロラ ティーチャーは宮崎駿?

顧客と話をしていたら、スカイ・クロラを観たという話題が出た。
なかなかの映画好きで、ときどき鋭いコメントを披露したりする方である。
この方によれば、「ティーチャー」は宮崎駿のことなんだそうだ。
アニメ業界の絶対的な父であり教師たる宮崎駿を殺すことによって、クリエイターとしての自我を確立する。
うーん。
深読みしすぎだと思う。押井監督もそこまで露骨な自己投影はしないでしょう。
でもおもしろい意見だ。ユニークだ。
深読み・曲解がいくらでもできそうなのが、押井作品の特徴だ。

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