型破りアニメ、惡の華
2013年春アニメがはじまった。
ジョジョの奇妙な冒険第2部、サイコパスの終了でひと区切りついた感がある。
代わってサンライズのシリアスロボットアニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」、大ヒット原作「進撃の巨人」、宇宙戦艦ヤマト2199など、話題作がいっぱいだ。とても全部は見切れないので、2、3話見てピンと来ないものは切ろうと思っている。
その中で、おもしろいんだかおもしろくないんだか、さっぱり分からない作品がある。
惡の華である。
実写をトレースした奇妙なテイストの作画。繰り返される灰色の日常。歩道や手すりの鉄錆びの執拗なシーケンス。彩度の低い、暗い画面。さっぱり進まないドラマ。不安定なボーカルのオープニング曲と、不気味なエンディング曲。
なんだこれは?
第一話、第二話まで見たけど、さっぱり物語が進まない。
主人公はふつうの高校生(中学生?)。文学に耽溺している。クラスのあこがれの女子に思いを寄せているが言いだせない。ある日、意中のひとの体育着の入ったポーチを偶然みつける。ここまでが第一話。
第二話。体育着をできごころで盗んでしまう。うしろの席の女子、ナカムラに見つかっていた。罪悪感にさいなまれ体育着を換えそうとするが勇気が出ない。ナカムラに呼び出されて放課後の図書室でくだんの女子と対面する。以上。
いやー。ふつうだったらせいぜい一話Aパートで終わる内容だわ。
ふんいきとしては、アニメ版「銀河鉄道の夜」に似ている。幻想的というか、現実離れしている感じ。小津安二郎的と言えないこともない。
一言で言えば、前衛的なアニメだ。通常のアニメの文脈から意図的に逸脱しようとしている。
中でも、小悪魔キャラのナカムラをあえて不細工に描いているのがすごい。原作を調べたけど、ふつうにアニメ・マンガ的にかわいいキャラだ。ナカムラを不細工にしてしまった時点で、このアニメは原作の意図とはかけ離れた作品になった。どう収拾するんだろう。
「かわいい小悪魔ちゃんに翻弄される主人公」は、アニメ的に分かりやすく、アニメ的に共感しやすい。しかし「不細工な痛キャラに翻弄される主人公」は、共感できない。「オレもあんな風に知らない女子からいじられたい」と思えない。それだけに、「なんでこんなおかしな女にいたぶられるのか」というもどかしさ、痛々しさが強調される。
きっとそれが、製作者の意図なんだろう。
惡の華は、通常のアニメのおもしろさ、カタルシスをすべて葬っている。美少女もテンポの良いドラマ運びも恋愛ドキドキも、いっさいない。ただひたすら、主人公の絶望感、焦燥感、羞恥心を強調し、視聴者に突きつけてくる。
その不快さを、ASA-CHANG&巡礼のエンディング曲が端的に表現している。
おもしろいのか?おもしろくないのか?見ていてさっぱり分からない。快か不快かと言えば、まちがいなく不快だ。痛々しすぎる。不安定な作画の線がいら立たしい。でも目が離せない。型破りな作品であることは間違いない。
今期、要注目作品です。
しかし、こんな前衛的な曲がアニメのエンディングとは。「少女革命ウテナ」がJAシーザーを起用したとき以来の衝撃。そのうちアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンやスロッビング・グリッセルがアニメに使われる日が来るかも知れないね。
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