おっさんホイホイ、LPレコードのワナ、ボーン・イン・ザ・USA
LPレコード。ターンテーブル。
一昔前まではオーディオマニアか、一部のもの好きの懐古趣味ととらえられていた。
自分もレコードが好きで、ターンテーブルもずっと手放さないでいた。
が、まあ面倒と言えば面倒。
レコード棚から目的のレコードを探し当てる。
ビニール袋からジャケットを取り出し、ジャケットから内袋を取り出す。内袋からレコードを取り出す。
レコードをターンテーブルに載せ、ホコリがあればホコリをクリーナーで取る。
レコード針を持ち上げ、レコードの縁に位置を合わせ、静かにレコード針を下ろす。
スマホで音楽を聴くのに比べ、音楽を聴こうと思ってから実際に音が出るまでに、何段階ものプロセスが必要だ。
正直、面倒くさい。
レコードやカセットしかなかった時代は、その手順が面倒だと思ったことはいちどもなかった。
が。
CDの時代が訪れ、MDの時代が訪れ、iPodが発明され。
いまではスマホで手軽に世界中の音源にアクセスできる。迷子になったレコードを求めて、棚を片っ端から探しまわることもない。
それでもいまだにレコードに惹かれてしまうのは、やっぱりレコードというものが自分の音楽の原体験だから何だと思う。
そして今。
レコードは同じような気持ちのおじさんたちをターゲットとした、新たな市場となった。
次々と再発されるLPレコードの数々。
そのほとんどが、60年代から90年代にかけての往年の名盤たちだ。
ピンクフロイド。ボブ・ディラン。ドアーズ。マドンナ。山下達郎。
そして値段が高い。
一例を挙げる。
Bruce Springsteen/ボーン・イン・ザ・U.S.A.<完全生産限定盤/レッド・クリア・ヴァイナル>
タワーレコード価格で4,400円。
『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』40周年記念カラーヴァイナルが6月発売決定! | ブルース・スプリングスティーン | ソニーミュージックオフィシャルサイト
完全生産限定版、カラーレコード仕様、日本盤のみ特色シルバー巻き帯、英文ライナー翻訳、解説・歌詞・対訳付と言うのがまた購買意欲に拍車をかける。
完全に中高年、もっと言えば50代後半以降のおじさんのふところを狙った商売だ。
値段も微妙である。「おじさんたち、もう50代後半でしょ。このくらいなら出せるでしょ。もう子育ても新しい人生設計もないんだし、小銭を貯め込んでもしょうがないでしょ。払ってちょうだいよ」
そう言われている気がする。む。
ボーン・イン・ザ・USAは日本でもめちゃくちゃ売れて、一時期は中古盤が市場でだぶつき、ワゴンセールで300円とか500円で売っていた記憶がある。
それがよんせんよんひゃくえん。
うーむ。
なんでこんなことをグダグダ書いているかというと、迷っているのである。
おっさんホイホイ、レコード会社の思うつぼと言われればそれまで。
だが。
たとえマーケットの格好の標的と言われようと、買っても聴くのはせいぜい2,3回でしょと妻に言われても、小林克也の声が脳裏によみがえり、街中のレコード店がこのLPを飾っていた時代に青春を過ごした身としては、購入したいのである。
しかしよんせんよんひゃくえんかあ。
それだけあったら妻とおいしい海鮮丼が食べられるしなあ。
でも海鮮丼はいっかい食べたらそれっきりだしなあ。
このジャケットを見るたびにあのころの気持ちがよみがえるのは何ものにも代えがたいし。
でもよんせんよんひゃくえんかあ。
というワケで逡巡はとうぶん止まらなそうである。コマッタ。
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