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2020年6月17日 (水)

過去の亡霊

"ほとんどのアルコホーリクは飲み続けてきた間に、滑稽で恥ずかしい、あるいは悲劇的な、とっぴな行動の跡を残している。(中略)ヘンリー・フォードは、人生で最高に価値のあるものは経験である、と言った意味のかしこい言葉を残している。この言葉は、私たちが過去から何かを学んでいこうという意欲があるときに初めて真実になる"

アルコホーリクスアノニマス「第9章 家族、その後」

 

最後の酒からもうずいぶんと時間が経つけど、いまだに過去の記憶がよみがえってくるときがある。

ふとした弾み、ちょっとしたきっかけで、鮮烈な飲酒時のエピソードが脳裏に浮かび上がる。

先週、スーパーで買い物をしていて、酒コーナーで巨大なウイスキーの瓶を見つけた。2リットル以上の瓶だろうか。

自分が飲んでいたころには、こんなものはなかった。

当時こんな瓶があったら、よっぽど自分も楽に酒を手に入れていただろう。

そんなことをふと考えていたら、当時の記憶がよみがえってきた。

 

まだ20代、飲酒が激しかったころ、ぼくは原付バイクで酒を買いに行っていた。

ほとんど終日酔っていたから、もちろん酔っぱらい運転だ。遠くのスーパーに行くのはさすがにはばかられた。

遅くまでやっている近所の酒屋に出かけては、いちばん安いウイスキーを買っていた。

ショルダーバッグを肩に、安酒の瓶を何本も買う。

バッグに入るのは、せいぜいが2,3本。

しわくちゃの千円札と小銭で安酒を買い、バッグに詰め込む自分を、酒屋の店主は何も言わずにじっと見ていた。

ぼくはなるべく会話をせず、視線を合わせず、うつむいたまま足早に酒屋を立ち去っていた。

酒を買いに行くこと自体が苦痛だった。だが、酒をやめることはできなかった。

 

もう何年、何十年も前の話だ。

ずっと忘れてた。

 

こう言った過去の記憶、過去の亡霊こそが自分の資産なんだと思う。

ぼくはアルコホーリクだ。アルコール依存症だ。

何十年酒を止めていても、それは変わらない。

自分がソブラエティを保つためには、過去の亡霊から学び、自分がかつて何もので、いま何ものなのかを確かめていく必要がある。

酒を口にしなくとも、感情のソブラエティはいつも試されている。

ふいに現れる過去の亡霊は、自分の生きる方向を見定めるためのギフトなんだと思う。

 

行動こそが回復の鍵だ。

AAプログラムを実践していくこと。

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