フジロック2015、楽しかった。
色んなバンドを見た。山の緑と開放的なフジロックの空気を味わった。
が、中でも感銘を受けたのはフー・ファイターズとギター・パンダだ。
今回はフー・ファイターズについて書いておきたい。
フー・ファイターズは、言わずと知れたアメリカを代表するロックバンドのひとつである。
フロントマンであるデイヴ・グロールは6月12日、スウェーデンのステージで演奏中に転落。右足を骨折する大けがを負った。
その際もライブを中断せず、ギブスを装着してライブを完了したことが話題になっている。
フー・ファイターズのデイブ・グロールがライブ中に骨折!→ライブ強行してロックすぎる - ハードワーカーズ
それから一月半。フジロック前のライブでは特製の車いす(というか専用フロート、山車)に乗って座ったままライブをしていたという。
7月24日(金)、グリーンステージ。ぼくはモッシュピットにいた。フーファイのセッティングの様子がよく見えた。例の専用フロートも見えた。やはりケガは完治していなかったか。
まあ、仕方がない。車いすに乗った状態では、激しいライブを期待する方がムチャというものだ。ミドルテンポやスローナンバー中心の落ち着いたライブになるだろう。
そう思いながら、ぼくはグリーンのモッシュピットでデイヴ・グロールに思いをはせていた。元ニルヴァーナのドラマー。現フーファイのギター兼ボーカル、フロントマン。
世界一有名で短命な伝説バンドの生き残り。暗いイメージを払拭してのフーファイでの再起。
そんな思いは、不意に鳴り響いた甲高い絶叫でさえぎられた。
フーファイのロゴが記された巨大垂れ幕。その向こう側でデイヴ・グロールが絶叫しているのだ。次の瞬間、垂れ幕が落ち、1曲目が始まった。Everlong。
特製フロートに乗ったデイヴ・グロールがシャウトする。バンドの演奏もいきなりのハイテンションだ。
モッシュピットは熱く盛り上がる。トシのせいで最前列付近がきつくなってきたためやや後方に下がるが、それでもステージとファンのやけどしそうな熱さが伝わってくる。
で、2曲目。モンキー・レンチ。
もう会場は大沸騰ですよ大沸騰。骨折?車いす?関係ない。フー・ファイターズのステージはこんなにも熱いものかという、最高のテンション。
その後もたたみかけるようにヒットナンバーを繰り広げる。途中でデイヴ・グロールのフロートが、モッシュピットまで延びた特設の花道に進むとファンは大きな歓声で応える。
このバンド、なんかとっても仲がよさそう。
ドラムの人はなぜか「ソニーは、ハイビジョン」と書いた青いはっぴを着てうれしそうにドラムを叩いている。電器店の人ですかあんたわ。
眉の太いギターの人も、終始にこにこにこにこしている。ちなみにメンバー紹介の時にみんな好きな曲をちょっとずつ弾いたんだけど、この人だけにこにこしながら自分のほっぺたをひっぱたいて終わり。いや、いい人だわ。
て言うか、デイヴ・グロールは照明を背負ったフロートに乗って演奏しているんで、バンドメンバーとの演奏中のアイコンタクトはいっさいできない。にもかかわらず、どの曲もタイミングはばっちりである。完璧に息の合った演奏である。どんだけ練習しているんだこのバンド。
演奏もさることながら、デイヴ・グロールのMCには参った。
途中「ある男の話をしよう」と言って、弾き語りで自分の骨折物語を歌い出した。
ステージから転落する映像。真っ二つに折れた足の骨のレントゲン写真。受傷直後は足の骨が飛び出していたと語る。うげげ。
それでもステージを中断せず、ドクターに足の骨をおさえてもらいながら演奏を続けたそうだ。その写真もスライドショーで流れる。
こういった一連の流れをおもしろおかしく話すデイヴ。フロアも大爆笑。
でもね。ぼくは思うんですよ。
たとえばぼくは去年、腰痛がひどくて2,3日仕事を休んだのね。腰が痛いだけでトイレにも行けない、仕事にも行けない、ベッドの上でうんうん言っている以外のことはいっさいできなかった。
何より、予定していた仕事をすべてドタキャンせざるを得ず、すごく落ち込んだ。メンタルがだだ下がりだった。
たかがサラリーマンのワタクシでさえこの有様なんだから、数百人のスタッフを抱え、数億円規模のビジネスをしているロックスターがどれだけ混乱したことか。
少なくとも、ノーテンキな気分ではいられなかったはずだ。足が治らなかったらどうしよう。立てなくなったらどうしよう。そんな不安もあったはずだ。でもデイヴ・グロールはそんな様子はみじんも見せずに、自分のケガをひょうひょうとユーモラスに語る。
そして子どもみたいなへたくそな絵を見せながら、病床で特製フロートの構想を練ったことを語る。
アニメのセリフじゃないけど、かっこいいとは、こういうことさ。
自分が歌うのは自分のため、ファンのため、そして何より、自分についてきてくれているスタッフのため。
そうまとめて、彼は次の曲に移っていった。いや、かっこいい。ほんとかっこいい。
ライブは最高。そして、デイヴ・グロールといういかしたアニキと語り合ったような、そんな気分でステージを見終わった。
彼の陽気でひょうきんな態度は、一見軽々しく見える。でもその下には焼けるような真剣さがある。
(どっかで聞いたセリフだな)
痛いこと、つらいことをユーモアに変えて話す彼。その裏側に、肉体のダメージなんかにオレの精神性は左右されないんだ。足が折れようと車いすに乗ろうとオレはオレのロックンロールを生きるんだ。
そういう、確かな意志を見た。
腰が痛いくらいでびいびい言っていた自分が恥ずかしくなりましたよ。
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