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2015年4月 2日 (木)

AAに紹介するのは医者か?仲間か?

日本の場合、ニューカマーがAAに自発的に来ることはまずない。

ひとつは日本ではAAの知名度がそれほど高くないことがあげられる。ぼくは飲んでいたころ探偵小説マット・スカダーシリーズが好きでAAのことは知っていたが、そういう人はあまりいないだろう。
もう一つは、知らないサークルに飛び込むことへの抵抗だ。医者から言われて、回復のために自助グループが必要なのは分かった。でも日が暮れてから言ったこともない公民館に、初めて行くのは気が引ける。ぼくもそうだけど、アル中は新しいこと、見知らぬ状況を好まない。臆病なのだ。
では、AAに来るのはどういう経路か。
だいたいが病院の紹介である。医者や看護師、ソーシャルワーカーなどからの紹介。
あるいはメッセージを運んでいる仲間の誘いで来ることもある。

では、病院の勧めとメッセージ、どちらが有効なのか。

ここに面白い研究がある。医者が勧めた方がいいのか、仲間が勧めた方がいいのかを調べた研究だ。

Does active referral by a doctor or 12-Step peer improve 12-Step meeting attendance? Results from a pilot randomised control trial. - PubMed - NCBI

短い記事なのでぜひ原文を読んで欲しいが、訳してみた。例によって訳はテキトーです。

医師の積極的な紹介、または仲間の関わりはミーティング参加を改善するか?

【背景】
12ステップ自助グループ(SHG: Self Help Group)への活発な参加は治療中・治療後の物質依存の予後に関連する。しかし英国でのSHG参加率は低い。
【方法】
RCT(無作為抽出試験)を用いて、医師または12ステップグループの仲間の積極的な紹介がミーティング参加率に影響するかを調べた。解毒入院中の151人のアルコール、麻薬、コカイン、ベンゾジアゼピン依存患者に積極的なミーティング紹介を行った。紹介方法別に12ステップグループ仲間群 (PI)、医師介入群(DI)、介入なし群(NI)の3つに分け、退院2〜3ヶ月後まで83%を追跡調査した。
【結果】
入院中の積極的なミーティング紹介は有意にミーティング参加率を高めた(88% VS 73%)。退院後のミーティング参加率はPIが64%、DIが48%、NIが33%であり、PI群がより高い参加率を示した。入院中のミーティング参加率は退院後より3倍高かった(59% vs 29%)。退院後の継続的なミーティング参加者はより高い断酒・断薬率であった(60.8% vs 39.2%)。断酒・断薬率は紹介の手法ごとに特に大きな差はなかった(44% [PI], 41% [DI] and 36% [NI])。
【まとめ】
12ステップグループへの参加は断酒・断薬と大きく関連した。とくに12ステップグループの仲間の積極的な紹介は継続参加率を高めた。患者の予後は強力な回復サポートなしにはあり得ない。英国での12ステップ活動支援がメリットを生むことを示した。

てなことで、医者の紹介は仲間の勧めに劣ることが分かった。
医者の紹介成功率48%、仲間の紹介成功率64%。
仲間群の圧勝ですね。
で、いちど継続参加につながれば、その後の断酒率はあまり変わらない。当たり前か。

しかし何だろう。仲間の紹介成功率64%って、日本はそんなに高い実感はないぞ。病院メッセージからミーティングにつながる率はせいぜい数パーセントって気がする。体感的に。
英国の介入は「解毒入院中」ってのがミソかも。酒が抜けてある程度落ち着いてからメッセージを受けても、あまり身が入らないのかも知れない。
あるいは英国ではもうちょっと積極的にニューカマーを引っ張っているとか。日本は病院メッセージに出かけてもひたすら体験談をするだけで、あんまり引っ張らないもんね。もうちょっと強く呼び込みをしてもいい気もする。

それにしても、日本でもこういう研究やらないかしら。日本のAAの活動も、客観的な数字がないと議論ができないもんね。

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コメント

日本で言う『病院メッセージ』と海外でのメンバーからの紹介は、中身が異なるのだと想像してます。
日本の『病院メッセージ』は回復のメッセージになってないのじゃないかな?
昔、患者さんに言われた言葉
『そんな飲んでた時の話はええねん。どないしたらええねん?』
この言葉を聞かされてから、そんな風に考えだしました。
もう、13年ぐらい前の事です。

投稿: k | 2015年4月 5日 (日) 15:05

kさん

おそらくおっしゃるとおりだと思います。
たぶん日本のAAは病院メッセージで露骨な勧誘を避け、自分の体験談が中心なのでしょう。で、体験談となるとどうしても飲んでいたころの話になってしまう。
よその国のメッセージはどんな塩梅なんでしょうね。
自分を含め、メッセージでは希望を運びたいと思うのです。

投稿: カオル | 2015年4月 5日 (日) 23:28

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