回復って何だろう。
アルコール依存症からの回復とは、どんなことなんだろう。
最近また分からなくなってきた。以前はもう少しはっきり分かっていたような気がするけど。ミーティングが足りないせいかもしれない。
誰もが「回復」という言葉を口にするけれど、その定義はすごくあいまいだ。
ある人にとっては酒を口にしない状態を言うし、ある人にとってはよりよい生き方を指す。
われわれみんなが使う言葉だけど、ひょっとしたら同じ言葉を口にしながらみんなゼンゼン違うイメージを抱いているのかも知れない。
さて、こういうときこそウェブサイトである。インターネッツである。
回復の定義、調べてみました。
NCADD(National Council on Alcoholism and Drud Dependence, Inc.)という組織が、HPにこんな記事を載せていた。Definition of Recovery。回復の定義。
https://ncadd.org/recovery-support/definition
冒頭で色んな経緯を述べたあと、最終的にはSubstance Abuse and Mental Health Services Administration (SAMHSA) という機関の文言を引用している。
SAMHSAの回復の原則
・自発的であること。
・多様な道のりでかまわない。
・(部分的ではなく)全体的であること。
・仲間によってサポートされていること。
・対人関係に支えられていること。
・文化に根ざし、影響されうる。
・トラウマへの対処がなされていること。
・個人、家族、コミュニティに関わり、責任を持つこと。
・他者への尊重を持つこと。
・希望に基づくこと。
うーん。なんだかよく分からない。さらに以下の4つの領域が回復を支える、としている。
1.健康。疾病を克服・管理し、同時に身体的にも感情的にも健康な生き方をすること。
2.家。回復を支えるための安定して安全な生活の場を持つこと。
3.目的。仕事、学業、ボランティア、家族のケア、創造的な取り組みなど、意味のある日常の活動をすること。
4.支え、友情、愛、希望をもたらす人間関係や社会ネットワークを持つこと。
こっちの方がまだ分かりやすい。
要するに社会に参加し、有意義な人間関係を持つこと、社会の一員として支え合いをすること、ということか。
ほかにもいろんな組織の回復の定義を引用しているけど、割愛。
ざっと見たところ、対人関係、社会性を重要視しているのが分かる。
いくら酒やクスリが止まっていても、人を恨んで安定した対人関係が築けなかったり、社会から退却していたのでは回復とは言えない、ってことだ。
もちろん依存物質が止まっていなければ話にならないんだけど、回復の定義を見ていると、そこんところは手段あるいは経路であって、回復の目標ではないようだ。
まあ、考えてみたらわれわれアルコホーリクが困るのは健康面もあるけれど、多くは社会的なトラブルだ。
家族を不幸に叩き込み、職場の人間関係を枯らし、援助的な立場の人たちにまで毒を浴びせ、ひんしゅくを買った。ぼく自身、あえて苦言を呈する親切な人たちに反発し、怒りの感情をぶちまけた。
結果、ぼくは社会から孤立した。誰もぼくを構わなくなった。そうなったらそうなったで、自分から離れていった人たちを恨んだ。自分に同情し、飲むのは奴らのせいだと信じた。
依存症は社会性の病気だって言うけれど、ほんとうにそのとおりだ。
回復というのは、失った家族や社会との絆を取り戻すことなんだと思う。
そのためにはもちろん酒が止まっていないといけないし、感情的な安定性も必要だ。まわりの人たちにいちいちムカついてぶち切れていたら、誰とも何の関係も築けない。
社会性の面から考えると、回復はすごく動的なものに思える。
人間関係、社会性なんて水もの。いちど良くなっても、絶えず維持し続けなければこわれてしまう。
かといって他人に振り回されて生きるのもおかしな話だ。
安定した人間関係、社会性を維持しつつ、自分の軸は見失わないこと。
しかしそう考えると、回復ってなかなか哲学的なテーマだね。
いかによりよく生きるか、という人間の本質的な問題そのものだもんね。
ARG(Alcohol Research Group)という組織がまた別の回復の定義を考えている。
こちらはなんと39項目。長い!時間のある人は読んでみてください。
http://www.whatisrecovery.org
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