シアトルのAAその1
道に迷いながらたどり着いたのは複雑な交差点の角、Recovery Cafeという場所だ。回復施設らしい。
入り口が分からずにうろうろしていると大柄な黒人男性が声をかけてくれた。そこの裏口から入れという。握手をして先に会場に入る。
会場はざっと20畳くらい。タイルカーペットの上にキャスター付きの椅子が30席くらい置かれている。片隅にはコーヒーセット、壁には各種イベントの掲示物。棚にはパンフレット類。世界共通のAAミーティング会場である。
さっきの仲間が掃除仕事を終えて中に入ってきた。名前はジョン・W、このミーティングのセクレタリだと言う。日本から来たというと大いに驚かれ、歓迎された。たまにツーリストのメンバーが訪れることがあるが、日本人は初めてだそうだ。
せっかく来てくれたんだけど、午後の早い時間なのでこのミーティングは7,8人しか集まらない。それでもかまわないか?もちろんかまわない。
ぼちぼち参加者が集まり、ミーティングが始まる。
20代とおぼしき白人の若者が3名。ジョンも含めて長めのソブラエティの仲間が3名。ぼく。ちょうど7名だ。
20代の若者たちはまだ数回目のニューカマーらしい。落ち着かず、しきりに視線を動かしている。
ミーティングが始まる。
序文を読み、3章、5章の冒頭部の読み上げがあり、ミーティングの注意説明が入る。米AAにはハンドブックがないというのは有名な話だが、このミーティングではハンドブックとほぼ同じ箇所を抜き出して読み上げていた。
ハンドブックのあるなしは根本的な問題ではないのだろう。
この日のテーマは「おそれ」。「今日を新たに」のこの日の箇所が、ちょうどそのテーマの部分だった。ニューカマーの3人が分担して、「今日を新たに」の該当箇所を読み上げる。その後各自、そのテーマについて話す。
ニューカマーの3人も、きちんとテーマについて話す。そう言えばこのニューカマーたち、萎縮していない。先ゆく仲間たちやぼくにきちんとあいさつをし、自己紹介をする。テーマに沿って話をする。
この辺、自己主張をする国、自分の意見を意思表示する文化が背景にあるんだろう。米国で出会った人たちは、意見を言うタイミングにはみなきちんと意見を述べていた。
ミーティングの途中でバスケットが回ってくる。
バスケットを回す前に伝統7が読み上げられ、説明が入る。地域でも地区でも全体サービスでもコストがかかっている、われわれの組織は献金で成り立っている。
ぼくは5ドルを入れた。となりに回すと、となりの仲間がバスケットを押し戻してきた。おい、これ5ドルだぞ。いいのか。どうも1ドル前後が相場らしい。ぼくは外国人、気を使ってくれたんだろう。
かまわない、OKだというとうなずいてバスケットを回す。
バスケットの中には、スポンサーリストが入っていた。男女各1枚ずつ、スポンサー可能な仲間の名前と電話番号が書いてあった。
バスケットを回している最中に説明が入る。これはスポンサーシップのリストだ。自由に持って行ってかまわない。壁にも同じものが張ってある。メモするのも紙ごと持って行くのも自由だ。
最後にもう一度、スポンサーシップの説明が入る。ニューカマーの3人に向けて言った言葉だろう。
とにかく電話して欲しい。困ったことがあろうとなかろうと。
ミーティングはそのまま終わり、ニューカマー3人は帰って行った。誰もスポンサーリストは持って行かなかったしメモも取らなかったが。
このミーティングは1時間。16時から次のミーティングが始まり、こちらはいつも30人ほどが集まるという。もちろんそのまま残ることにする。
いくつか聞きたいことがあったので、思い切ってジョンに聞いてみることにした。
ちょっと聞きたいことがあるんだけど、時間を取ってもらっていいかな。
かまわない。タバコが吸いたいんで外に出よう。
表に出て日の当たるシアトルの歩道を歩く。
つづく。
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コメント
続きたのしみ。
投稿: otama | 2014年6月27日 (金) 16:27
otamaさん
AAの本場はやっぱりちがうなーと思いました。層が厚く、屋台骨がしっかりしている印象を受けました。シアトルAAシリーズはもう少し続きますのでおつきあいください。
投稿: カオル | 2014年6月28日 (土) 08:05
ごぶさたです。FB解禁までまだ、かみさんの許可がでませんので、ひいらぎさんのメールで、ここを教えていただきました。あめりか物語をじっくり読ませていただきます、まずは、あいさつから。
投稿: みよしけいじ | 2014年8月11日 (月) 00:27