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2013年6月11日 (火)

あふれる恥辱と自己嫌悪

以前の記事で、アルコホーリクの場合、二歳児なみの傷ついた自己が人生のバスを運転し破滅に向かっていく、という話を紹介した。
このときにヘンマンさんの意見として「回復においてもっとも困難な問題のひとつは、飲んでいたころの破壊的な行為にともなう恥と自己嫌悪の感情である」という一文があった。きょうはここを考えてみたい。

アルコホリクの性格傾向のひとつに「打たれ弱い」という点がある。批判を受けたりちがう意見に接したときに、人格を丸ごと否定されたかのごとくに傷つく。叱責を受けたり自分の意見が受入れられなかったときも同様だ。ぼくも当てはまる。

ささいなことで傷つくのは自尊感情が低いからだ。やっかいなのは、それに加えて自動思考が作用する点だ。
酒飲みは二重生活を送っている。もともとアルコホリクは飲酒にのめり込んでいく過程で、飲酒以外にもいろんな恥辱と自己嫌悪を抱えている。さらに酒の問題が加わると、ちょっとでも酒のことをいわれると感情的になる。そういう反応パターンが自動思考として染みついちゃっているんである。過去に同じような反応のパターンを繰り返していたために、つい同じような反応をしてしまうのである。

だから、そこんところをトレーニングで変えていかなくっちゃいけない。ささいなことでいちいち怒ったり自己嫌悪に浸っていたらまともに生きていけないからである。会議で自分の意見が批判されただけで怒り狂い、出勤できなくなるくらい自己嫌悪に落ち込んでいたらやっていけない。自分の自動思考のパターンを知り、感情的に困難な事態にぶつかったときは意識的に自動思考を避ける必要がある。

このときに問題になるのが、先に挙げた「恥と自己嫌悪の感情」だ。あまりにも恥と自己嫌悪が強過ぎると自動思考を見直すどころじゃない。自分を見直すにはある程度の冷静さとタフネスが必要なんだけど、あまりに恥と自己嫌悪が強いとそれができなくなってしまう。無理に見直そうとすると過去の恥辱の感情がよみがえり、またひとつ自尊感情を低める自動思考が強化されてしまう。

恥と自己嫌悪を取り除くためには、まず恥と自己嫌悪を取り除かないといけないという矛盾。じゃあどうしたらいいのか。

ひとつは、安心感だと思う。
われわれがミーティングで安心できるのは、みなが同じ経験をしてきたんだ、自分だけじゃなかったんだと気がつけるからだ。恥も自己嫌悪も、ミーティングでは口に出していい、共感できる話題だ。率直に自分の体験を話し、安心できる。一言で言えば分かち合いだ。免責、免罪を与えられると言ってもいいだろう。
自分だけじゃなかった、思い出したくもない過去のできごとは病気の側面だったんだと思うことで、われわれは押しつぶされそうな自己嫌悪から解放される。

もうひとつは、「自分の考えを使わない」ということだ。
自分の考えを使わないというのは、よくできた言葉だ。恥と自己嫌悪による思考を「自分の考え」「過去の考え」という言葉で対象化し、意図的にいまの自分の思考から切り離していく。で、ハイヤー・パワーという客観的、大所高所からの俯瞰的な視点に切りかえる。これによって過去の感情や思考をいまの自分から切り離していく。

でも、安心しているだけじゃダメだよね。ひと息ついたら、しっかり過去をふり返って自動思考におさらばしないとね。
落ち着いてきたら棚卸しを行って、恥と恥辱の感情をもたらした原因を探しだす。どこで反応のパターンを間違えて使うようになったのかを見つける。自分で気がつけない部分はスポンサーに見つけてもらう。見つかったら、われわれはそれを変えようとせずにはいられない。じっさい、大勢の仲間がステップに取り組んで元気になっている。
せっかくAAにきたのにAAプログラムをやらないのはもったいない。
「自分がこんなみじめな状態になったのは、やつらが傷つけたからだ」「変わるべきはやつらで、自分は何ひとつ変わる必要がない」と言う話はよく聞く。でもそれってすごく二歳児的な考え方だと思う。交通事故に遭った人は、どれだけ相手に非があろうと自分のリハビリは自分でする。依存症者も自分で自分のリハビリをしなければ、結局は自分の足で立てなくなっちゃうと思うのです。

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コメント

ぼくは、最近になって傷つくことが 少なくなっております。
ハイヤーパワーのおかげです。
AAの12のステップがあって良かったです。

投稿: アポ | 2013年6月14日 (金) 07:04

アポさん

良かったじゃないですか!
ささいなことで傷ついたりいらいらしたり、神経過敏な傾向はほんとうにわれわれを悩ませますものね。
ぼく自身、12ステップがなかったら心の平穏は得がたかったと思います。

投稿: カオル | 2013年6月14日 (金) 18:10

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