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2013年4月21日 (日)

High functioning alcoholicとは?(映画「フライト」感想2)

映画「フライト」感想の続き。
アディクションの視点からの映画評をググっていたら、こんなサイトを見つけた。

Denzel Washington as High-Functioning Alcoholic in "Flight" | Psychology Today

主人公を「High functioning alcoholic」として考察している。
High functioning alcoholic。高機能アルコール依存症。はじめてきく言葉だ。Functional alcoholicとも言うらしい。調べたら、ウィキペディアにも載っていた。

High-functioning alcoholic - Wikipedia, the free encyclopedia
以下、大意。

高機能アルコール依存症(HFA: High Functioning Alcoholic)とは、飲んでいるにもかかわらず職業、学業、人間関係などを維持できているアルコール依存症者のこと。
ハーバード公衆衛生大学院によれば、大学生の31%がアルコール乱用、6%が依存症の兆候を示している。DSMのあたらしい診断基準では37%が依存症に該当する。医師らによれば新しい診断基準によって依存症を早期に発見できるという。
おおくのHFAは依存症の典型例にはみえないため、周囲からも依存症とは見なされない。彼らは成功者であり、優秀な業績を達成しているため、本人、同僚、家族友人にも否認をもたらす。高機能アルコール依存症者は米国のアルコール依存症の19.5%にのぼり、うち55%は喫煙者で33%は依存症の家族歴を持つ。
1.飲酒パターン
・一杯飲めば渇望を生じる。飲酒がもたらす結果を予測しない。
・次の飲酒のチャンスを待ち望んでいる。
・飲酒するとふだんとはちがう振舞いをし、飲酒を繰り返すたび再現される。
・周囲もヘビードリンカーである。
・約束の前に飲んでしまう。
・飲酒の限度を決める(3杯しか飲まない、週に3日しか飲まないなど)が、守れない。
・飲酒運転をするが逮捕、事故に巻き込まれたことはない。
・ごほうびとして飲む。
・ブラックアウトを経験している。
・休息時に飲酒し、ひと区切りのあとはさらに量が増える。
・酒のない生活が想像できない。
2.否認
・アルコール依存症の典型像には合致せず、人生もきちんとこなせていると思うため、自分をアルコール依存症とは見なしがたい。
・回復の援助を断る。
3.専門性と私生活
仕事や学業で良好な業績を達成している。
社会生活および人間関係を維持できている。
4.二重生活
・はた目には生活が成り立っているようにみえる。
・専門分野ないし個人的生活と飲酒生活とを分け、二重生活を送る技術がある。
5.底つき
・飲酒によっていくつかの決定的な損失、悪い結果を経験している。
・底をついていても気がつかない。

要するに、仕事や生活もきちんとこなせている。むしろほかの人より優秀な能力、業績を持っている。そのため自分も周りもアルコール依存症とは思わない。そういうタイプを言うらしい。
たしかに、フライトの主人公はHFAだ。ジェット旅客機のパイロットというだけでも優秀なのに、絶体絶命のアクシデントを抜群の技術で乗り越えている。劇中では、事故を再現したシミュレーションで10人中10人のパイロットが着陸に失敗している。
だからといって主人公が依存症であることには変わりない。でも、「オレは優秀」「自分の飲酒と事故はなにも関係ない」と言い、かたくなに拒む。

上に紹介した記事に、おもしろいことが書いてあった。
あたらしい恋人のニコールは薬物依存(+アルコール依存?)である。彼女は生活に困窮し、アパートを追われ、社会の底辺層として描かれている。「典型的なジャンキースタイル」の彼女は底をついて順調に回復する。一方、HFAである主人公は底をつかず、問題が深刻化していく。つまり、ふつうの依存症者とHFAの対比だと言うのだ。
なるほど、言われてみればそのとおり。ニコールは生活が行き詰まり、オーバードーズでぶっ倒れ、自助グループで回復せざるを得なかった。その一方、主人公が否認する理由、「アル中だったら神業みたいな緊急回避ができるか」は、本人も周囲も納得せざるを得ない。でもそこにこだわり続けているあいだは、主人公の飲酒はどんどんひどくなっていった。

HFAについて。
HFAという見方は、依存症の初期、早期という概念とも重なっているように思う。アルコール依存症が悲惨な、すべてを失う病気だということに変わりはない。HFAか典型的アルコール依存症かというのは、まだ多くのものを失う前なのか、失ったあとなのか、というちがいのようにも思う。
ドクターボブは職業を失う前に、酒を止めて回復することができた。ビル・Wはかつて株の中買い人として成功を収めたが、酒で仕事も信用も失い、妻の実家で窮乏生活を送った。
ふたりはどちらもHFAなのか。それともドクターボブはHFAで、ビル・Wは典型的依存症者か。
その差はほんのわずかだ。どっちがHFAかといえば、「ふたりともひどいアル中」が正解だろう。
ただ、HFAの概念が浸透すれば、より多くのアルコール依存症者が悲劇的な状況になる前に回復の入り口にたどり着ける可能性がある。
たとえ神業みたいな操縦技術を持っていようと、どれだけ高いステイタスを持っていようと、アルコホリズムはアルコホリズムなのである。

ちなみに、こんな掲示板も見つけた。

結婚生活なんでも掲示板

国際結婚した奥さまが、HFAの夫について相談している。
HFAって、欧米ではわりにポピュラーな概念なのかもね。

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