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2013年4月19日 (金)

映画「フライト」 AA(アルコホリクス・アノニマス)的感想(ネタバレなし)

デンゼル・ワシントン主演、ロバート・ゼメキス監督の映画「フライト」を見てきた。
アルコール依存症からの回復をあつかった映画だった。AA(アルコホーリクス・アノニマス)による依存症からの回復映画、といってもいい。アルコール問題は味つけ程度のサスペンス映画だと思っていったら、良い意味で期待を裏切られた。

中途半端ではどこにも行き着けなかった。私たちは転機に立たされていた。私たちは思いきって神に保護と配慮を願った。
アルコホーリクス・アノニマス 第5章 どうやればうまくいくのか

これをハリウッドが映画にするとこうなる。そういう映画だった。

あらすじ。
主人公はアルコール問題を抱えた旅客機パイロット。きょうも酔っぱらって旅客機を操縦する。機体トラブルが発生し、主人公は抜群の技術で背面飛行、胴体着陸を敢行。最小限の犠牲で乗客を救う。しかし血液からアルコールが検出、飲酒操縦の疑惑をかけられる。飲酒がばれたら本人は懲役刑、会社も大ダメージだ。本人も会社も必死で飲酒問題を隠そうとするが、飲酒はどんどん悪化していく。そしてついに事故調査の公聴会の日がやってくるが…。

この映画に、AAの直接的な描写はそれほど多く出てこない。にも関わらず、これはAAを主題にあつかった映画であるとぼくは断言する。それは「信仰」「自分なりに理解した神の発見」が、この映画の重要なキーになっているからだ。
12ステップの最初の3つ、といってもいい。最低の生き方をしていた主人公が、神を見つけだす。
それは、主人公が最初から持ち合わせていたものではなかった。ビッグブックに書いてあるとおり「自分では出来なかったことを神がやってくださっていることに突如として気づいた」のだ。

アルコール依存症もAAも知らないひとだと、この映画のクライマックスはうまく理解できないかも知れない。ご都合主義で、唐突な印象を受けるかも知れない。でも、われわれAAメンバーは知っている。
こんなドラマチックな奇跡がじっさいに存在することを。アルコール依存症からの回復の場面では、この手の奇跡がしばしば訪れることを。

書きたいことは山ほどあるけど、ネタバレになっちゃうのでやめておきます。

小ネタをいくつか。
その一。
AAをアルコール自主治療協会と訳すのはしかたがない。断酒会も許容範囲だ。しかしスポンサーを保証人と翻訳するのはどうなのか。一般人には意味が通じないぞ。せめて「AAの先輩」くらいにできなかったものか。AAネタはアメリカ映画には多いんだから、もう少し勉強してほしかった。

その二。
訳といえば、邦題なんとかならなかったか。オリジナルタイトル「フライト」ではシンプルすぎる。この映画の魅力が伝わらない。ここはひとつ、配給会社お得意の珍タイトルを付けてほしかった。「酔いどれ機長、底抜け脱線フライト〜人生も背面飛行〜」とか「空飛ぶ千鳥足!きりもみ飛行大作戦」とか。「英雄とアル中のはざまで—フルスロットル・ウォッカ」とか。
ふざけすぎてる?いいいや、映画配給会社は「霧の中のゴリラ」を「愛は霧の中に」に変えるくらいの実力があるんだから、その気になれば可能なはず。

その三。
AAアイテムが随所に出てくる。AAメンバーは探してみよう!

その四。
弁護士さん役が名演。困り顔がぴったりくる。ほんとうに困って気持ちがよく伝わってきた。
主人公の友人の売人。場を和ませるファンキーなおっさん。登場のときに流れる曲はストーンズの悪魔を哀れむ歌。ギミー・シェルター。意味深。

その五。
胴体着陸のとき、飛行機は教会の屋根を破壊する。信徒たちは懸命に乗客たちを助ける。これも意味深。

その六。
再飲酒時の描写も秀逸。再飲酒心理を見事に表していた。これを見ると、やっぱり依存症は病気なんだな、と思う。本人が飲んでしまうのは自覚が足りないから、家族のことを考えてくれないから、という嘆きをご家族から聞く。でもこの主人公だって、まわりのことを考えていないわけじゃない。いま飲んでしまえば刑務所行きと言う状況だから、もちろん自覚が足りないわけでもない。飲酒欲求という病気の症状の前には、自覚も周囲への思いも吹っ飛んでしまう。そこんところ、よく描けてた。

てなことで、おおいに感動して帰ってきた。
Blu-rayが出たらぜったい買おうっと。

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コメント

見させて頂きます。
情報を有り難うございます。

投稿: k | 2013年4月19日 (金) 20:24

kさん

ロードショーは終わりつつあります。上映している映画館は残り少ないです。
お早めに!

投稿: カオル | 2013年4月19日 (金) 21:04

購入して見終わりました。
A.A.紹介映画ですなぁ。
断酒会系のハイヤーパワーを排除した人や普通の人には、公聴会での告白は理解し難いかな?

日本の刑務所もあんな風になれるかなぁ?

投稿: k | 2013年8月 2日 (金) 21:50

kさん

ご覧になりましたか。
たしかにわれわれAAメンバーから見ればAA紹介映画そのものですね。
クライマックスのシーンは、ひとの良心のあり方を描いた名シーンだと思います。
前にも書いたとおり、主人公にとって最後の嘘をつくのは造作もないことでした。でも、それをやってしまうと良心の最後の一線を越えてしまう。
神に思い切って保護と配慮を願い、そして良心が勝った。結果、罰は受けたけれど、主人公の魂は救われた。
ひとの良心、神の意志、善なる心、そういうものが嘘や偽りに打ち勝ってほしいというのは、万人に共通する気持ちだと思います。
ぜひkさんの詳しい感想もお聞かせください(^_^)

投稿: カオル | 2013年8月 7日 (水) 13:47

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