荒吐10、チャボのこと
荒吐10、最高だった。
桜が咲き、晴天にめぐまれ、日中は「これぞ荒吐!」と言う絶好のシチュエーション。
書きたいことは山ほどあるんだけど、まずはチャボのこと。
名手・ 早川岳晴とのおなじみのコンビ。
「ムード21」(だったか?)や「アメリカンフットボール」など、おなじみのナンバーでライブは進んでいく。上手い。曲もいい。RC、麗蘭、ソロ、どんどんこの人の表現力は増してきている。
ギタープレイはもう、チャボのギターとしか言いようのない巧さ。フレーズがどうの、アーティキュレーションがどうのと言うより、ピッキングした時の出音だけで格を感じる。
客とのやり取りもリラックスした感じで、とてもあったかい。
「東京駅は子どもが大勢いてもう帰ろうかと思ったけど、来て良かったぜ、荒吐」
いつものやんちゃなチャボである。そして客の声援がまたハンパない。
今回は清志郎の追悼イベントもあり、チャボのステージにも清志郎のタオルや完全復活祭のTシャツの客がちらほら。複雑な気がする。チャボはあくまでチャボとして、一人のアーティストとしてここに来ているのだが。
ポール・マッカートニーのライブにジョン・レノンのTシャツを着た客がたくさんいたら、どんな気持ちだろうか。この辺、当事者じゃないと分からないだろうけど。
中盤にさしかかって、「日本の有名なロック・ナンバー。あいつだったらきっとそう紹介するだろう」とのMC。湧き上がる観客。RCバージョンの「上を向いて歩こう」が始まる。
その後。
「あいつとふたりで、俺の部屋で曲を作っていたんだ・・・。ライブの最後に盛り上がる曲を作ろうぜって言うから、おし、清志郎、じゃあこんなのはどうだ」
チャボはローコードのDを弾いた。
そのままあの、何百回聞いたか分からないリフが始まる。
涙腺のもろい40代にこれはキツイ。案の定、周囲で泣いている同世代多数。
チャボはいったい、去年から何度この「雨上がりの夜空に」を弾いたんだろう。
割れんばかりの大合唱の中、そんなことを考えていた。
曲のあと、チャボはこう言った。「バンドをやっているヤツ、一人で歌っているヤツ、どんどんこの歌を歌ってくれ。あいつも、それが一番喜ぶから」
一度ならず二度、そう繰り返して言った。
その時、合点が行った気がした。
ああそうか、そう言うことなんだ。次の世代に手渡すこと、それがチャボがこの曲を歌う理由なんだ。
悲しみに酔っぱらっている連中とは別のところで、彼は自分の地に立って、彼にしか蒔けない種を蒔いているんだ。
そう思えたら、何だかとてもうれしい気持ちになった。
ライブの最後は「ガルシアの風」。グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアを追悼した曲だという。いい曲だ。
しっとりと余韻を残して、チャボはステージを下りた。
ぼく自身の中では、2日目のトリビュートステージより、このチャボのライブがいちばんハートに突き刺さった。
哀悼と、喪失を乗り越えて次の世代にメッセージを伝えていこうという強い意思を感じた。
清志郎への敬意を払いつつ、還暦を迎えたチャボが、いまだに走り続けるロッカーであるという意思を感じた。
オレはカラダ張ってがんばってる。いつまでもめそめそしてんなよ。ほんと、そう言われた気がしたよ。
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