フジロック09、別格のパティ・スミス
パティ・スミスのステージは凄すぎて、なにをどう書いて良いのか分からない。
1曲目からラストまで、圧倒されっぱなしだった。
もう御年60を過ぎているはずなのに、88年のドリーム・オブ・ライフのジャケットとほとんど変わらない。
登場するなり無邪気な笑顔で観客に手を振り、レトロなカメラで客席を撮影する。
アットホームなライブになるかと思ったら、曲が始まると一転してシリアスなムードに。
しゃがれた声、ときどき裏返る、詩とも歌とも言えるボーカル。初めてレコードに針を落とした時からまったく変わらない声。
ああ、パティ・スミスだ。パティ・スミスがここにいる。なんかこう、信じられない気分。
ビコーズ・ザ・ナイトも、グローリアも、ロックンロール・ニガーもやってくれました。
途中、何度も長いMCが入る。
環境問題やエコロジーなど。
最後には長いメッセージ。
We can make a revolution of spirit. Not economy, not politics, not government, not religion,
but we can be a revolution of spirit.
こう書いてしまうと単なる環境活動家のように思えるかも知れないけど、違うんだ。
パティの圧倒的な表現力。
彼女は言葉を信じているんだと思う。自分の言葉が誰かに伝わる。伝える気があれば必ず伝わる。
そう信じている。
だから、長い英語で日本人に訴えかける。細かい単語は分からなくとも、彼女のその意志と気迫は聞くものの魂を揺さぶる。
圧倒的な表現者。表現力。
これはもう、見てみないと分からない。
感動というか、圧倒的な1時間でした。
ちょっと別な話。
ステージにメンバーが登場した時、上手側に立ったギタリストがトム・ヴァーラインだと思ったのね。
アレ、でもなんだかトム・ヴァーラインと違うかな。
なんせテレヴィジョン「マーキー・ムーン」のアルバムジャケットでしか知らないからよく分からない。でもこんなやさしそうな雰囲気の人ではないような?
と思っていたら、周囲から「レニー!」の歓声が。
そうかレニー・ケイだったか。あれれ今回トム・ヴァーラインが一緒だと思ったんだけど、憶え違いだったか。
そういえば下手側、ドラムセットの傍らに腰掛けてうつむいてギターを弾いている人がいる。
メンバーと目も合わせず、顔も上げず、客に目を向けようともしない。ずーっと下を向いて勝手にオブリガードを弾いている。
なんだこの失礼なオッサンは。
サポートメンバーだろうか。まぁいいや。気にしないでパティのステージに集中しよう。
・・・と思っていたら。
そのうつむいたオッサンの奏でるギターの音。この音色。この音使い。
こ、これはまぎれもなくトム・ヴァーライン!!
言われてみればギョロリとした目、陰鬱な表情。たしかにトム・ヴァーラインだ。
でも・・・。
多少体重が増えるのはやむを得ないとは言え。
硬い表情。ぼさぼさの髪。メンバーや観客とまったくコミュニケートしない態度。
病的な印象が強い。
ああ、あの伝説のテレヴィジョンの、伝説のギタリストが・・・。
パティ・スミスのかつての恋人で、パティをして「世界一美しい首の持ち主」と言わしめた男が・・・。
ぶよぶよで首なんてなくなっとるやん。
パティの不滅ぶりと対照的にやつれ果てたトム・ヴァーラインの姿。
フクザツな思いを隠せなかったのでした。
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