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2008年9月 2日 (火)

ディスコミュニケーションをめぐる吉野屋の戦い

吉野屋が好きだ。
そうしょっちゅう行くわけではないが、安価で手軽に、待たずに食事ができるのがうれしい。
味だってそう悪くない。全国どこに行っても、ほぼ均一なクオリティである。
仕事の合間など、あまり時間のない時にファミレスに行って、やたら待たされたりするのは消耗以外の何物でもない。
で、今日も本社に出向いたついでに吉野屋に立ち寄った。
時間は11時半ごろ。
最初は2名の客しかいなかったが、ぼくが店に入ってしばらくするとどっと混んできた。
女性の店員が2名、それぞれ接客と調理を担当している。12時を過ぎると男性スタッフが1名投入されるのだが、この時点ではまだだ。
しばらくして、いきなり10名以上の客が相次いで入店してきた。
店員2名はスピードアップして対応するが、とても間に合わない。
そんなとき、一人の男性客が入ってきた。
年齢は70代中盤ぐらいだろうか。動きがやや鈍い。持ち帰りコーナーの前に立ち止まり、しばし考え、注文を発した。すでにこの時点で接客担当の女性店員はややイラつき気味である。
男性客は注文した。
持ち帰り。牛丼(並)4つ。野菜サラダ4つ。味噌汁4つ。
高齢でやや動きも悪いこの男性にテイクアウトを頼む家族もいかがなものかと思うが、それはまあ何か事情があるのだろう。
待つことしばし。
その間にも客はひっきりなしに押し寄せてくる。
調理担当の店員は冷静に調理をこなし、着実に料理は客の元に届けられている。
対照的に、接客担当の方はややパニック気味だ。声がうわずっている。
やがて男性客の注文ができあがった。
牛丼(並)4つ。野菜サラダ4つ。味噌汁4つ。注文を確認し、支払いが済み、男性の手に料理を入れた手提げ袋が手渡される。
その時。店員がこう聞いた。
「ドレッシングは和風・ゴマどちらがよろしかったでしょうか」
やや早口の言葉に、とまどう男性客。
「あ、う・・・」
すでに車のキーを取り出し、帰る体勢に入っている。突然の選択肢になんと答えたらいいか分からない。
数秒の間の後。
「和風ゴマ・・・」
そう彼は答えた。
どうやら「和風ゴマ」でひとつの単語だと理解したらしい。
冷静に考えれば、ちょっと早口だったとは言え、「どちらがよろしかったでしょうか」という後半のくだりで「和風」と「ゴマ」は別々のものだと分かるはずだ。が、唐突な事態に対して頭が回らない様子。
男性客の返答に、当然店員は納得しない。質問をたたみかける。
「和風・ゴマどちらがよろしかったでしょうかっ」
「和風ゴマ・・・」
早口になればなるほど、「和風」と「ゴマ」が別物だという趣旨が遠ざかっていく。
さあ、どうする店員?
忙しいかも知れないが、ここはひとつドレッシングの説明をきちんとするしかないだろう?

しかし彼女はさらにもう一度、だめ押しの質問。
「ドレッシングは、和風・ゴマ、どちらがよろしかったでしょうか?!」
なぜ同じ文章で質問をするのだ女性店員よ?!言い回しを変えるとか?!
もちろん即答する男性客。
「和風ゴマ・・・」

戦況は膠着状態に陥った。
これ以上同じ会話を繰り返しても、男性客が「和風ゴマ」以外の返答をする可能性はゼロに等しい。
あきらめてドレッシングの説明するか。言い回しを変更するか。躊躇している時間はない。このやりとりの間にもどんどん料理はできあがり、客は入店してきているのである。
さあどうする女店員?!

数秒の間の後。
彼女はこう言った。「和風とゴマ、二つずつお付けしますね」
「はい・・・」
何が何だか分からないが、事態が収束した様子にホッとする男性客。
こうしてつかの間のディスコミュニケーションは終了した。
男性客は、最後まで事態を理解しなかったようだ。が、店員の方もひょっとしたらうまく問題点を理解できなかったのかも知れない。
それにも関わらず、彼女は機転を利かせて難局を切り抜けた。いやあっぱれ。
やれやれ。
見ているこっちが緊張しましたよ。
日本語はムツカシイ。ホント。

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