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2008年5月27日 (火)

自殺報道

自殺の報道が相次いでいる。
しばらく前の騒動がようやく一段落したと思ったら、また新たな自殺報道。
これでもかと執拗に、自殺の詳細な情報が繰り返される。
マスコミはいつになったら扇情的な自殺報道を振り返るんだろう。

自殺報道に関して、WHOが2000年にガイドラインを出している。

WHOによる自殺予防の手引き
研究協力者:高橋祥友(防衛医科大学校・教授)
http://www.ncnp.go.jp/ikiru-hp/manual/whoguide.pdf

ぜひすべきこと
事実を報道する際に、精神保健の専門家と緊密に連絡を取る。
自殺に関して「既遂」(completed) という言葉を用いる。「成功」 (successful)という言葉は用いない。
自殺に関連した事実のみを扱う。一面には掲載しない。
自殺以外の他の解決法に焦点を当てる。
電話相談や他の地域の援助機関に関する情報を提供する。
自殺の危険因子や警戒兆候に関する情報を伝える。

してはならないこと
遺体や遺書の写真を掲載する。
自殺方法を詳しく報道する。
単純化した原因を報道する。
自殺を美化したりセンセーショナルに報道する。
宗教的・文化的な固定観念を当てはめる。
自殺を非難する。

今朝のワイドショーを眺めていたが、WHOのガイドラインなんてことごとく当てはまらなかった。報道の仕方はとことん扇情的。
自殺のサイン、電話相談、援助機関に関する情報なんて影も形も見当たらなかった。
自称精神科医のメガネの女性が何かしゃべったが、芸能人コメンテーターと何ひとつ変わらないシロートでしかなかった。

司会者、コメンテーターたちは口々に叫ぶ。
痛ましい事件だ。なぜもっと早く気付けなかったのか。悲しい。やり切れない。ひとりひとりが考えなければいけない問題だ。
だがその言葉はあまりにも薄っぺらく、どこかお祭り騒ぎだ。悲しいふりをした、誰もが楽しめるゴシップネタ。
うわさ話は楽しい。他人の不幸は蜜の味だ。自分に無関係な限りは。我が身が脅かされない限りは。

上のガイドラインを見て欲しい。
短い箇条書きの中に、自殺を食い止めたいと言う真摯な願いがにじみ出ている。
リンク先の高橋祥友先生の報告は、万人に読んでいただきたい優れた文書である。自殺のサイン、誤った知識など、有益な情報がコンパクトにまとめられている。

WHOのガイドラインから8年。
日本のマスコミはいつになったらWHOの提言を聞くんだろう。この次もまた自殺の方法や薬品名を詳細に伝えるんだろうか。そしてそれをネットのせいにするんだろうか。

原文
http://www.who.int/mental_health/media/en/426.pdf
追記:日本語訳がありました。こちら

自殺対策支援センターライフリンク 「いじめ自殺」報道のあり方

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コメント

ガイドライン 拝見しました。
WHOがこうしたものを出しているとは知りませんでした。
自分自身もガイドラインに外れた行動していたと反省しました。
ありがとうございました。

投稿: 満 | 2008年5月29日 (木) 06:54

満さん

自殺報道はセンセーショナリズムばかりが優先されている現状です。
夜のまじめな報道系は抑制が効いているのですが、朝のワイドショーは目を覆わんばかり。
自分を含め、大勢の目に触れるのはこちらの方です。
ぜひガイドラインを早期に導入して欲しいです。
WHOのガイドライン、日本語版の方もリンクを追加しておきましたので御参照ください。

投稿: カオル | 2008年5月30日 (金) 18:38

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