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2008年1月11日 (金)

ツェねずみ

宮沢賢治の童話、ツェねずみ。
あるブログで紹介されて、久しぶりに読み直した。

柱がある日、ツェねずみに言いました。
「ツェねずみさん、もうじき冬になるね。(中略) 幸いぼくのすぐ頭の上に、すずめが春持って来た鳥の毛やいろいろ暖かいものがたくさんあるから、いまのうちに、すこしおろして運んでおいたらどうだい。僕(ぼく)の頭は、まあ少し寒くなるけれど、僕は僕でまたくふうをするから。」
ところが、途中に急な坂が一つありましたので、ねずみは三度目に、そこからストンところげ落ちました。
「お前さえあんなこしゃくなさしずをしなければ、私はこんな痛い目にもあわなかったんだよ。償(まど)っておくれ。償っておくれ。さあ、償っておくれよ。」

全文はこちら
他人の好意を受けておきながら感謝するどころか、結果が悪いと平然と償いを要求するツェねずみ。
被害者意識、犯人探し、恨みつらみの論理、結果論。肥大化した権利意識。
宮沢賢治は日本人の美しい面、善良な面とともに、こういう暗く醜い面もしっかり見据えていたんだな。
利己的で被害者感情を振りかざすツェねずみ、メディアスクラムとかバッシングとか、昨今のマスコミの風潮と重なって見える。オレには何だか今のこの社会全体が、ツェねずみ化しつつあるような気がするよ。
他人のミスを追求し、制裁と賠償を要求する社会。
そう言う行為が是認され、本来恥ずべきことなんだという気持ちがどっかに忘れられた、ユーザ意識オンリーの社会。
振り返って自分はどうか。いつの間にか染まっていないか。

まどっておくれ、まどっておくれ、まどっておくれ。さあ、まどっておくれよ。あんたに傷つけられたこのオレさまをまどってくれよ。あんたのせいでひどい目に遭ったんだ。さぁさ今ここでまどっておくれ。

オレの口も、いつの間にかそんな言葉をしゃべってんじゃないのか。
イカンイカン。気をつけなきゃね。

しかし、宮沢賢治もきっといろいろヤな目に遭ってきたんだろうな。
それでもよだかの星とか銀河鉄道とか、あんなに美しい話が書けるんだからすごいよな。
リスペクト、宮沢賢治。

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コメント

あんたのせいでひどい目に遭ったんだ。さぁさ今ここでまどっておくれ。

つい最近もこんな感じだったなぁ。
自分も含めて日本人が壊れていく。

そう感じるのは古い世代だけで、実はグローバルな時代に向けて進化しているのかも

人類共通の口癖
昔は良かったな

でも未来の方が素敵かもね

今を精一杯生きる
明日の事はわからないけど…

でも無理はしない
明日出来る事は今日はやらない
大好きな言葉
何でも先に持ち越し

弱い自分好き
強がる自分大嫌い
でも強がっちゃうのだ

投稿: 盆爺2008 | 2008年1月11日 (金) 21:30

カオルさん。明けましておめでとうございます。
飲んでる頃、給料の技術料を削減されて労働基準局に訴えたことがあります。今思えば自分の責任を果たさずに、権利だけを主張していたおろかな自分に気がつきます。そんなことをしたのに、体調を崩して長期休暇を続ける私に上司は「最善のことをします」と9ヶ月も長期休暇を与えてくれました。最終的にはお酒で頭も体もボロボロになり退職することになったのです。
ところで、カオルさんにおすすめのマインドマップってのがあります。ブログで紹介したので良かったらみてください。私はかなりはまってます。

投稿: ぷみら | 2008年1月12日 (土) 00:03

宮沢賢治というと、私は「やまなし」がトップクラスで好きでした。

小学校の頃の教科書に載ってたんですが、本当に好きで好きで。

水の底の美しさがあれだけ表現されている文章をそれからも読んでない気がします。

投稿: otama | 2008年1月12日 (土) 00:14

今回は多くのコメントをいただき、ありがとうございます。

>bonziさん
これもグローバル化の流れなんですかね。
グローバル化から完全に取り残されているせいか、今の世の中に違和感を感じることばかりです。
それにしてもbonziさんの文章は面白いですねー。独特の味があります。

>ぷみらさん
ぼくも飲んでいたころ、さんざん仕事を休みまくって迷惑をかけておきながら、ある期間分の残業代を精算してくれなかったことでひどく不平不満をまき散らしていたことがありましたよ〜。
当時のことをいま思い出すと赤面してしまいます。同時にいまは飲まないでいられることに、あらためて感謝の念が湧いてきます。飲み続けていたら、きっと今ごろサイテーの人間だったでしょう。ほんとうに今もって「まどうてください」と言い続けていたかも。
ところでマインドマップ、面白そうですね。ぷみらさんのマインドマップも楽しそう。さっそく体験版をやってみます。

>otamaさん
「やまなし」って、調べてみたら蟹の親子とかクラムボンとかが出てくる、詩のような、短編小説のような、幻想的なお話ですね。そうだそうだ、国語の教科書に載っていたっけ。印象深いですよね、あれ。
ぼくは「よだかの星」と、あと「グスコーブドリの伝記」が好きです。
それにしても「ツェねずみ」とか「グスコーブドリ」とか、独特の言語感覚がありますね、宮沢賢治。

投稿: カオル | 2008年1月13日 (日) 00:07

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受信: 2008年1月11日 (金) 20:23

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