ふちがみとふなと
楽しみにしていた、ふちがみとふなとのライブを見てきた。
くるりの京都での野外フェスに出たり、近ごろあちこちで名前を目にするバンドだ。
友部正人のエッセイ「ジュークボックスに住む詩人2」で、淵上さんの書いた詩を読んだ。
単純なのにふところに飛び込んでくる、心地よい詩。簡単な言葉を積み上げているように見えて、はっとさせられる詩。ウッドベースと歌だけでこの詩の世界を作り上げるって、一体どうやるんだろう?
初めて見るふちがみとふなとのライブは、とても暖かくて気持ちがよかった。
テーブルを片づけた簡単なステージに、ウッドベースを構えた船戸さんとピアニカを持った淵上さんが立つ。その佇まいからして、彼らの世界が伝わってくる。
ノーマイク、ノーエレクトリック。PAなし。生ウッドベース、生歌声。生ピアニカ。
淵上さんの歌声は時につぶやくように、時に歌い上げるように、変幻自在だ。つぶやくように歌っても、しっかり後まで声が届いているから不思議だ。
場所はいわき市のポテトハウスじゃがいもと言う居酒屋。ガロが積み上げられた本だな、木と煉瓦で作った、古い喫茶店のようなお店。
木の壁には独特の音の質感がある。木の壁に跳ね返った音は豊かな低音と、何とも言えない独特のアンビエンスがある。
木でできた居酒屋で聞くPAなしのふちがみとふなと。
せつなくて哀しくて、同時に笑える。笑いとせつなさが同居する、独特の世界。
なんかもう、いっぺんでファンになっちまいました。
これほどオリジナリティにあふれ、情感にあふれた音楽があったとは。
どうしたらこんな音楽が作れるんだろう。静かで暖かくてメロディアスで心に響く歌の数々。
初めてスザンヌ・ベガを聞いた時のようなすがすがしさと、戸川純や宮沢正一を聞いた時のようなインパクト。
文句なしに、今年見た中でいちばんのライブでした。
ふちがみとふなともすごかったけど、オープニングアクト2組もすごかった。
1人目はアコギの弾き語りだが、登場と同時に客席が大合唱で盛り上がる。2組目は憂歌団のようなブルース二人組、こちらも割れんばかりの喝采を浴びる。もちろんその後に出たふちがみとふなとはさらに大きな喝采を浴びる。
いわき市、なぜこんなに盛り上がるんだろう。とにかく客が良い。白けている客が一人もいない。
このお店のライブはまたぜひ来よう。ほんとうにそう思わせるスペシャルなライブでした。
ライブ終了後、購入したCDにサインをしてもらい、一緒に写真を撮ってもらった。
すでに宝物です。ふふ。
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