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2007年1月 8日 (月)

ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ

ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ

滝本竜彦のネガティブハッピー・チェーンソーエッジ読了。
滝本竜彦。「NHKにようこそ」の原作者である。
彼の第一作だと聞き、ネガティブハッピー・チェーンソーエッジを読んでみる気になった。
分類で言えば、ティーン向けライトノベルと言うことになるのだろうか。
謎のチェーンソー男と、闘う美少女。その女の子に恋する少年。
チェーンソー男とは何ものなのか。なぜ少女は異様な力を持っているのか。最後まで説明はない。
でもそれでいいと思う。説明する必要がないからだ。
これは、青春小説である。若者が書いた、若者の気持ちを表現する小説である。
好きな女の子といっしょにいられるだけでドキドキして、力が湧いてきて、どこまでも自転車を全力で漕いでいけそうな気になる、そういう気持ちにあふれている。
世界は哀しいことやどうにもならないことや理不尽なことに満ちていて、大人じゃないと言うだけの理由で世界から疎外されていて、でも筋道立てて抗弁することもできなくて、取りあえず親や教師を仮想敵にするしかない。自分がやっていることが筋道だってないことはじゅうぶん分かっているけれど、でもほかにぶつけようがない。そういう気持ちにあふれている。
「NHKにようこそ」と同様、ここでも理不尽な世界と闘う若者の姿が描かれている。もちろんチェーンソー男を倒してもNHKが巨大な陰謀組織だとしても世界は変わらない。
そんなことは分かっている。それでも仮想敵を作り出すことで、押しつぶされそうな不安や世界にたいする恐怖を対象化しようとする、主人公たち。
「NHKにようこそ」と共通する主題を通して、作者の不安や閉塞感が伝わってくる。

作者の滝本竜彦氏は大学を中退後、数年間アパートに引きこもってこの小説を書いた。小説を書くために引きこもったと言うよりも、引きこもり生活の中で「小説を仕上げなければ自分はダメ人間になってしまう」という思いで書いたようである。
しかしそんなことはどうでもいい。
これは、すてきな小説である。
少年と少女の恋の物語である。未来を模索して不安に悩む、普遍的な青春小説である。
エネルギーを暴発させて、むやみに間違った方向に突っ走る若者像がある。
悩み、笑い、傷つき、叫び、痛みにさらされながら成長する主人公に共感せずにはいられない。
破天荒だけれども説得力のあるポップな文体は、大槻ケンジを思わせる。
ぼくの十代二十代は鬱々としていてカッコ悪くて不安で不安で、それなのになにも実現できなくて、ほんとうにヤな時代だった。だからこそこの本と著者に、とても共感する。
滝本竜彦氏は現在も引きこもりながら著作中だそうだ。
平日の真っ昼間のアパート、カーテンのスキマから良く晴れた外界を見、あまりの平穏と世間の平和に慄然としていた日々。
外を歩く親子連れのしあわせそうな様子がこわくてこわくて、自分のダメ人間ぶりが恥ずかしくて恥ずかしくて、ウォッカを浴びるようにラッパ飲みしては「だいじょうぶ、オレはだいじょうぶ」と震えながら言い聞かせていた日々。
ぼくは何も表現することができなかったが、滝本氏は小説を書き続けている。
彼の小説が多くの人に読まれることを願ってやまない。

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