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2006年10月 3日 (火)

スティーブン・キング「骨の袋」読了

スティーブン・キングの「骨の袋」、読了。
なかなか読む時間が取れなかったが、ふと手に取ったら止められなくなってしまった。
それこそ寝る間も惜しんで、下巻を一気に読み進んだ。
正直、下巻の最初の方まではやや退屈な印象だ。
伏線に次ぐ伏線、不気味な予兆、アメリカの田舎町の人物描写や出版業界の裏側、主人公の人となりの丹念な描写など、味わい深いポイントはたくさんある。が、物語の進展が今一つだった。
それが、下巻の三分の一あたりから一気に物語が走り出す。
予兆が現実となり、時間を超えた恨みや哀しみが交錯し、壮絶なクライマックスに突き進んで行く。
過去と現在の描写が入り交じり、ストーリー的にも融合する。「IT」を思わせる仕掛けがおもしろい。
そして何よりも、クラシックな「幽霊譚」の体裁を成しているのがいい。

この小説の主題の一つは「報復の連鎖」だ。
誰かが誰かを痛めつける。傷つける。命を奪う。理由は、あとで考えればたいしたことじゃない。
面目をつぶされたとか根拠の薄弱な軽蔑とか、あるいは無理解、偏見。
それが大きな渦になって誰かを傷つける。
傷つけられた方は、相手を呪う。一族郎党まで根絶やしにすることを誓う。
そしてまったく関係のないひとたちにまで報復の連鎖は広がり、また新たな不幸を生み出す。

この小説が書かれたのはもちろん911以前だ。でも、やはり911的な解釈を考えてしまう。
いまキングは、911後のこの世界をどうとらえているのだろう?
恨みと報復が止めどなく広がり、ふたつの文化圏の衝突に発展してしまったこの世界を?
「テロとの戦い」という、それ自体矛盾した言葉がさも当然の正義のように人の口に上るこの世界を?
少なくともこの小説を読む限り、彼の世界観は「悪者をたたきつぶせば世界は平和になる」などという単純なものではないだろう。
そうであってほしい。

それはともかく、ラスト数十ページは、まさに読書の至福。
久しぶりに、おなかいっぱい小説を読んだ。
次は「ローズ・マター」か「アトランティスのこころ」あたり読んでみようっと。

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