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2006年10月 8日 (日)

おかえり

初めてのバースデイの日、ホームグループにはふたりの同期の仲間がいた。
1年のバースデイ。ろうそくが一本立ったバースデイケーキが三つ。3人の男性が、緊張した面持ちでそれぞれのケーキの前に座っていた。
翌年。
3人はふたりに減っていた。二つのバースデイケーキ。ひとりが欠けた。それでも同期の仲間がいるのは心強かった。
3年目。
ふたりはひとりになった。とうとうぼくだけ。3本のろうそくが、たった一つのケーキの上に乗っていた。
毎年順調にひとりづつ減っている。来年はぼくも消えてしまうのだろうか。漠然とそんなことを思ったのを憶えている。
さいわいぼくはまだ何とか飲まずに生き、AAにつながっている。でもバースデイが近づくとときどき思い出す。
1年目に並んでケーキを食べた、ほかのふたりはいまどうしているのだろうか、と。
そのうちのひとりのYくん。
いっしょにスノーボードに出かけたことがあった。信じられないくらいうまいボーダーだった。荒れたバーンも直滑降で突っ込んでいき、大胆にターンして見せた。
ボードも生き方も向こう見ずで、自信と希望にあふれていた。
いたずらっぽい笑顔が魅力的な若者だった。

職に就いた、とある日彼はミーティングで話した。夜の仕事だ、と。
先行く仲間の何人かは、彼に穏やかな意見を伝えたようだった。まだ早い。経験を重ねたAAメンバーでも夜の仕事を飲まずにこなすのは難しい。危険だ。しかし彼は若く、自信にあふれていた。酒で失ったものを早く取り返したい。仕事に就いて収入を得たい。この仕事に生き甲斐を持っている。そう折りに触れ口にしていた。
それからひと月ほどで、彼はミーティングから姿を消した。

ここ一週間ばかり、彼がカムバックしてきている。
いろいろあったようだ。
でも彼がミーティングに復帰しているのはとてもうれしい。
相変わらずの不敵でいたずらっぽい笑顔。
懐かしい仲間の顔を見ていると、それだけで何だかふしぎな感情が胸の奥に湧いてくる。
なんて言っていいか分からない。
おかえり。それしか言えなかった。
でも、たとえ彼がまたいなくなっても、戻ってくるたびにおかえりと言い続けよう。
いつもの教会の古びた集会室で、仲間とともに待ち続けよう。

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コメント

スリップしてもう一度AAにつながるには勇気がいりました。
3ヶ月飲み続けて底つきになり生きることがどうにもならなくなりました。
だけど「よく来たねえ!」とボロボロの私に笑顔をくれたのが救いでした。

投稿: ぷみら | 2006年10月12日 (木) 00:56

こんばんは、ぷみらさん。
ぼく自身はそういう体験はありませんが、仲間の話を聞くと、いちどAAを離れて戻ってくるのはかなり勇気がいるみたいですね。
そういう意味でも、仲間が戻ってくるのはとてもうれしいです。
ぷみらさんを救ってくれた笑顔を、今度はわれわれが新しい仲間に見せたいものです。

投稿: カオル | 2006年10月16日 (月) 23:22

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