ケーキバイキング。
甘い物好きなら誰もがいちどは夢見たであろう、夢の舞台。
ふだんなら1コか2コしか食べられないケーキが、好きな種類を好きなだけ食べられる。至福のひととき。
が。
われわれはオトナになった。現実を知った。
食べ放題は、決して楽園ではないことも知ってしまった。
食べ放題に供される料理は、一品料理のクオリティには遠くおよばない。質より量。メインのダイナーで供されるものとは明らかにちがうクオリティの料理。パテシエが丹精込めて作ったものとは明らかにちがう形状のケーキ。
いちどは思い描いた夢。そして思い知った苦いゲンジツ。
万感の思いを込めて、われわれはこうつぶやく。
「食べ放題。かぁ・・・」と。
しかし。
ここ仙台、Fiore CowBellはちがう。
土日・祝日のみ開催されるケーキバイキング。
そこで供されるのは、ふだんショーケースに並んでいるア・ラ・カルトの数々である。
ケーキバイキングの参加者はショーケースの前に行き、ほかの客が購入するのとまったく同じものを「これ」と指さして食べることができる。
そう。ショーケースのア・ラ・カルトがすべて、ひとつ残らず、余すところなく、食べ放題なのである。
「お店に並んでいるケーキを、好きなだけその場で食べられたら・・・」
こどものころの夢が、まさにゲンジツとなってるのである。
こ、これは参加するしか!
一皿め。
最初の一皿だけ、ケーキを2品取ることができる。
まずは定番のイチゴショート。そしてその隣に並んでいた、一風変わったモンブランを注文。
今回ぼくは「端から順番に注文」と言う方法を試みた。
ケーキ屋さんのケーキを、ショーケースの端から順番に食い尽くすのだ。ふふふ、店のものの驚く姿が目に浮かぶようじゃわい。
イチゴショートは、果実がたっぷり入っている。クリームも軽い味わいで美味しい。モンブランは、中に栗が入っている。見た目は軽いが、かなりこってりと濃厚な味わいである。
何の苦労もなく一皿めを平らげ、空の皿を掲げてショーケースに向かう。
写真はバナナのケーキだが、これは3皿め。すみません、2皿めは食い気に走ってしまって撮り忘れました。2皿めがブルーベリー(だったか)のタルト。3皿めがこのバナナケーキ。
バナナケーキは、トップのバナナが軽く焼いてあって、それを甘い寒天でコーティングしてある。おいしい。この時点で満腹感が到来しはじめるが、まだまだここからが本番である。
4皿め。アーモンドと抹茶のケーキ。甘い。抹茶の味がする。ローストしたアーモンドがカリカリしている。
この辺から、細かい味の違いがわからなくなってくる。「甘い」とか「酸味がある」とか「抹茶っぽい」とかの、大ざっぱな弁別しかできなくなってくる。頭が痛みはじめる。体中の血液に乳脂肪分と砂糖がじょりじょりに混じっている気がしてくる。
ま、負けるものか。
5皿め。
チーズケーキのプリン。
チーズこってりのプリンの上に、チーズケーキが乗っかっている。
ふだんなら大喜びして食べているであろう一品である。しかし、ち、チーズがこってりなさってますね・・・ボリュームもけっこう・・・。
写真も明らかにピントがぼけているのだが、趣向を凝らして撮り直そうと言う気が起こらない。と言うかだんだんうまくものが考えられなくなってくる。何かこう、すべてが現実から遊離しているような感覚に陥ってくる。あああ。ケーキが甘い。世界が遠い。
6皿め。
フルーツ盛り合わせのケーキ。
ここまでが限界でした。このケーキ、完食することができませんでした。
何とかフォークを持ち上げてケーキを切り取ろうとするんだけど、どうしても一定の場所から先に手が動かない。身体が言うことを聞かない。あああ。
「残しちゃダメだって、受付の人が言ってたよ」
妻の声がどこか遠いところから聞こえてくる。そんなことを言ったって、食べられないもんは食べられないんである。
「半分食べてあげよっか」
そう提案する妻。見れば妻も、かなりの数を食べている。やはり女性と男性では、甘いものに対する耐性もちがっているのか。
結局、半分食べると言う妻に、6皿めのほとんどを食べてもらった。
6皿。合計7コ。実質は6コと少し。
これがぼくのケーキバイキングの限界でした。
あとに残ったのは重たいお腹。甘いものを食べ過ぎたときの頭痛。そして自分の限界に挑戦したと言うここちよい疲労感・・・ウソ。ただ単に食べ過ぎてぼーっとしていただけです。
きょうの結論。
腹も身のうち。
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