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2006年5月17日 (水)

ジョー・ストラマー「レッツ・ロック・アゲイン」

GWに観た映画その2。
元クラッシュのジョー・ストラマーが亡くなる直前の映像を捉えた、彼の最後のバンドの映像だ。
クラッシュ解散後の長いブランク。本人に言わせれば、11年ぶりだそうだ。新しいバンドを率いて活動を再開し、2002年には日本ツアーを行う。その前後の映像がこの映画である。その年の12月、彼は心臓発作で不帰の人となった。享年50歳。
思えば、何をやっても「元クラッシュの」と頭に付けられてしまうのが、彼の不幸だった。
あまりにも鮮烈な、時代の象徴だったバンドのフロントマンであったため、その巨大なマスイメージに囚われてしまうのだ。
彼がステージに立てば、かならずファンは「ホワイト・ライオット」や「ロンドン・コーリング」といったクラッシュ時代の代表曲を望む。しかしジョー・ストラマーがそれに応えたとしても、結局はそれは過去の名曲の焼き直しでしかない。
ファンは、マスコミは、時代のカリスマであり、世界をアジテートしていたころの彼を、彼のサウンドを望む。どれだけそれが過ぎ去った過去のことであっても。どれだけそれがファンの記憶の中にしか存在しないサウンドであっても。

それでもジョー・ストラマーはキレたりしない。
来日の映像では、相変わらずファンと肩を組み、オバカなポーズでいっしょに写真を撮る。
飛び込みでプロモートに訪れたラジオ局では「おれ、ジョー・ストラマーって言うんだけど・・・」と言ってもさっぱり通じず、揚げ句インターフォンを切られてしまう。それでも彼は怒らない。怒らないし、あきらめない。
「そういうもんさ」と言う風にちょっと眉を上げ、淡々と事態に対処していく。

ある町では、手書きのフライヤーをせっせと何枚も作り、路上で通行人に手渡していく。もちろんジョー自らだ。
が、どれだけ熱心に手渡そうとしても、誰も受け取ってくれない。みな明らかにうさんくさいものを見る目で彼を見、ジョーを敬遠する。
あのクラッシュの、あのジョー・ストラマーである。U2やレッチリはじめ、世界中のミュージシャンから今なお最大級の賛辞の言葉を捧げられている、あのジョー・ストラマーである。世界中でおおぜいの若者の生き方を変えた、ロックの偉人である。そのジョーが、あの雑誌やアルバムのインナーで何度も見かけた、ファンなら誰でも知っているあの手書き文字。その直筆フライヤーを御大自らが路頭で配っているんである。
でも、誰も受け取らない。
それでもジョーは淡々と、「よし、次はもっと積極的に渡そう」「いまのは失敗だったな!次はこんな風に渡そう」とつぶやきながら、あきらめることなくチラシを渡し続ける。
あきらめない。へこたれない。ヤケにならない。愚直に、エンエンと、やると決めたことを貫徹する。
過去がどれだけ遠く過ぎ去ってしまっても、その背中は誰もがあこがれた、あのクラッシュのジョー・ストラマーにほかならない。

クラッシュとジョー・ストラマーにまつわる美談は多い。
ほとんど他人みたいな、友人の友人に仕事の世話をした。
寝るところのないものには自宅のソファを提供した。
ライブ終了後、エンエンとファンにサインをしたり写真をいっしょに撮ったりした。
アルバム「ロンドン・コーリング」は二枚組にもかかわらず一枚分の値段でリリースし、バンドは赤字を被った。
そう言うことを続けていれば、きっとイヤなことも山ほどあっただろう。
それでもジョー・ストラマーは、やっぱりジョー・ストラマーなのである。
人情が厚くてひとにやさしい、人生と他者に優しい視線を送り続ける、何とも言えない味のある男なのである。

映画はおおきなストーリーの起伏もなく、淡々と進む。ジョー・ストラマー&ザ・メスカレロスはステージをこなし、時にはレコード店の店頭でキャンペーンライブを行い、淡々と次の目的地をめざす。

映画の終盤、ふと思い出したように彼は映画のタイトルになった言葉をつぶやく。
「レッツ・ロック・アゲイン」と。
そのやさしい笑顔を見たとき、ぼくはもう、何とも言いようのない気持ちになった。
そうだね、ジョー。もういちどロックしよう。
20代を過ぎても、30代が終わっても。
時代遅れになっても、オッサン呼ばわりされても、ギターがさっぱり上手くならなくても、最新ヒットチャートの曲がひとつも分からなくても、それでももういちどロックしよう。ロックし続けようじゃないか。

「ネバー・ギブアップ」そして「レッツ・ロック・アゲイン」。
あなたらしい別れの言葉だよ、ジョー。

80年の来日公演。NHKで放映されたライブ番組で、ジョーの言葉がいくつか紹介されていた。
そのひとつに「パンクとは、アティテュードだ」というのがあった。
どれだけ負けが込んでいても、あきらめない。くじけない。ユーモアを忘れない。
最高のパンクロッカーでした。

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