音速ライン〜疾走するセンチメンタリズム〜
ほんとうに好きなアーティストは、なかなか書き出せないでいる。表現する言葉を選んでいるうちに、何をどう書いていいのか分からなくなるんだ。
音速ラインも、そんなバンドのひとつだ。
音速ライン
最初に聞いたのはシングル「スワロー」だった。
キャッチーなメロディ、線の細いボーカル。
アジカン風味の、流行のギターサウンド。最近流行の、パンクよりのギターロックバンド。でも、たとえばnumbergirlほどのインパクトはない。素直さと繊細さがうかがわれるけれど、いまひとつとらえどころがない。
そんな印象だった。
でも、なぜか気がつくといつも、クルマで「スワロー」をくり返して聴いていた。
気がつくと「街風」を購入していた。そしてやっぱり、クルマでくり返しくり返し聴いていた。
そして11月。
待望のファーストアルバム「風景描写」がリリースされた。
いま、ぼくのクルマではこのアルバムしかかかっていない。車に乗っている間、ずーっと聴いている。
センチメンタリズム。リリシズム。
感傷的で切ない歌詞が、美しい歌メロに乗っかって耳に飛び込んでくる。
ボーカル&ギターの藤井 敬之。きっとロマンチストで繊細なひとなんだろう。
傷ついたこと、傷つけたこと。信じようとしたこと、信じたこと。
彼の歌を聴いてると、なにがなんだか分からないまま、十代のころの切なく泣きたいような一生懸命な気持ちがよみがえってくる。
ひたすら疾走するリズム隊とディストーションギター。泣きたいくらいに切ない気持ちを乗せて、バンドのダイナミズムはとどまることなく突っ走っていく。
ファーストアルバムであるこの「風景描写」には捨て曲がひとつもない。
どの曲も、藤井の表現しようとした世界があますところなく広がっている。
既発表曲が何曲か入っているが、「完成度の低い曲で隙間を埋めるくらいだったら既発表曲を再録してでもアルバムの密度を高めたい」という思いからではないだろうか。
誤解を恐れずにいえば、スピッツの楽曲から上質のテイストを取り出してバンドサウンドに載せ替えた感じ。
このアルバムだけに全力東京しちゃったら、これでもう才能が枯渇しちゃうんじゃないか。そんな心配が湧いてくるくらい美しいメロディが全編に散りばめられている。
ギターを持った男の子が演奏する、甘く、切なく、すてきなアルバムです。
いつかライブが観たいな。
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