ミーティングで得るもの
ときどき、自分は何を求めてAAミーティングに参加するんだろう。そう思うときがある。
酒を止めたいから。自分の気付きを深めたいから。仲間と会いたいから。仲間の回復から力をもらいたいから。
いろんな理由がある。
でもひとつだけたしかに言えるのは、ぼくはこの共同体から離れたらきっと、またあのころに戻ってしまうだろうという言うことだ。
ひどい飲酒とそれにともなうトラブルで、すべてを失う。
回りのひとたちを傷つけ、自分自身を傷つける。
きっと、うまく生きていけないだろうなと思う。
でも回復を願いこの共同体にコミットし続けていれば、生きていける。
そして、飲んでいたころのひどい状態を見つめ、振り返りと気付きを得られる。
火曜日、久しぶりに隣市のミーティングに行ってきた。
小さなグループだ。
10人も入れば膝と膝がぶつかってしまう、小さな教会の小さな小部屋。
以前にそのグループのミーティングを訪ねたとき、そこではまだステップの話さえ出なかった。
集まった仲間たちは、自分の酒を何とか止めようとして必至にもがいていた。
そして訪れるたびに、前に参加していた仲間は消えていった。
今回訪れたときに、そのミーティング会場は穏やかな空気に満たされていた。
ごく自然に仲間たちはビッグブックのページを開き、その一部を読み始めた。
ビッグブックの内容に触れ、自分が理解している部分を過去の経験と照らし合わせて話し、理解できない部分はまだ理解できていないと、淡々と話した。
仲間の朗読した箇所-妻たちへ、と言う章だ-をぼくは何度も読んでいたにも関わらず、まるで頭に入っていなかったことに気がついた。そして仲間の声を通して、その朗読の内容がするするとぼくの中に染み込んでいった。
この章は依存症者の妻が、ほかの妻に話しかける形になっている。でもぼくはいままでそのことさえはっきりと理解していなかった。何度も読んでいたはずなのに。
この章ではある依存症の妻が、いかに依存症者本人に巻き込まれていったか、そしてそこから何を得たのか、が書いてある。
たとえがこんなことが。
ほかの女性がいたこともあった。それを知ったときどれほどショックを受けたことか。その女は私たちと違って、自分を理解してくれているのだと夫から言われるのは、何と残酷なことだったろう。
この簡潔な一文を書くためには、どれほどの傷が必要だったろう。
どれほどの涙が流れたろう。
この一文を書いた女性は、いったいどうやってこんなにも冷静に、悲惨きわまりない過去を振り返る力を得たのだろう。
そう思うと、この本を書いたひとに敬意を抱かずにはいられない。
そしてそこから、自分の過去を振り返る勇気をもらえる。
もちろん、ただ本を読んだだけでは分からない。この一文に心を留めることさえなかったろう。
ぼくは、仲間の経験を通し、仲間と希望や体験を共有することで初めてビッグブックに書いてあることに気付くことができた。
ビッグブックに触れて、仲間から得たものにあらためて気付く。そしてそこからまた、ビッグブックに書いてあることに気付くことができる。
ぼくがミーティング得ているものが何なのか、いまだに良く分からない。
それでもそれはとてもあたたかく、自分の過去や過ちに気付かせてくれる、ゆったりとおだやかなものだ。
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コメント
>仲間の経験を通し、仲間と希望や体験を共有することで初めてビッグブックに書いてあることに気付くことができた。
私の「天狗になった鼻」にもっともふさわしい仲間からの言葉だと思いました。
トラックバックさせていただきました。
投稿: あすなろ | 2005年7月22日 (金) 17:42
あすなろさん、トラックバックありがとうございます。
天狗の鼻だなんてとんでもない!
ぼくなんて分かったようなことを言ってても、ビッグブックをちゃんと読んでいなかったことにいまさら気がついているタワケ者です〜。
4年もAAに参加しててもこんなもんです。
はっはっは。
悩むってことは、回復の一過程、成長の一過程だと思うんですよね。
だいじょぶ、AAにつながっていればかならず回復できますよ〜。
ぼくもあすなろさんも、焦らず急がず、まわりの風景を楽しみながら回復の道のりを歩いていきたいですね〜。
投稿: カオル | 2005年7月22日 (金) 23:14
「この共同体から離れたらきっと、またあのころに戻ってしまうだろう」。
私もだんだんと強くそう思うようになりました。
今日一日を続けていたら1年がたちました。
まだまだ自分のパーソナリティの弱さがじゃんじゃん出てきますが、この共同体をライフスタイルとして生きてゆきたいです。
投稿: ぷみら | 2005年7月23日 (土) 13:06
はじめまして、ぷみらさん。
ぷみらさんもAAメンバーなんですね。
遅ればせながら、1年のバースデイおめでとうございます!
ぼくも1年のバースデイ前後から、だんだん自分自身の問題が見え始めてきました。
自己嫌悪に陥りながらも自分の問題を見つめることが出来たのは、やっぱりAAのおかげだったと思っています。
おたがい、良い生き方をしたいものですねー。
ぷみらさんのブログもさっそく拝見させていただいてまーす!
投稿: カオル | 2005年7月24日 (日) 23:06