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2005年6月 2日 (木)

throbbing gristle テクノと呪詛

throbbing gristle。
スロッビング・グリッセル。ふるえる軟骨。
このバンドをはじめて聴いたのは中学3年のときだった。
当時愛読していた「宝島」や「Fools Mate」で、やたらと神格化され、絶賛した記事が載っていた。
「あの」とか「伝説の」とか、やたら仰々しい形容詞で飾られた伝説のバンド。

公式サイト?

ちなみに当時の「Fools Mate」はいまのようなビジュアル系バンド中心の音楽雑誌ではなく、かなりマイナーな洋楽、特にニューウェーブやインダストリアル・ミュージック、ノイズ、前衛が多く取り上げられていた。また記事もどちらかというとインタビューよりは評論が多く、取り上げられる素材もアート・パフォーマンス(ああ、なつかしい響きだよパフォーマンス)や絵画、ネオアカ哲学、ジョン・ケージやらローリー・アンダーソンなど多岐にわたっていた。
当時北村昌志と言う編集長がいて難しい批評文などを書いていたけれど、のちにYBO2と言うバンドを結成してFools Mateの表紙を飾ったりした。骸骨のように痩せていて目がギラギラしててかっこよかったです。

それはともかくthrobbing gristle。
昔から宣伝文に左右されやすいワタクシは、とにかくレコード屋を探し回った。そのような伝説のバンドなら何はともあれ聴かねばならない。しかし国内盤は一向にリリースされず、「何かスゴイカリスマバンド、アート集団らしい」と言う期待ばかりが膨らんでいた。
そんなある日。忘れもしない、1981年の1月。
市内に唯一の洋盤屋にTG(と略するらしい)のレコードが入荷した。しかもボックスセット。ロゴマークの缶バッヂつき1万円。
悩んだ。
中学3年生の小遣いで1万円のボックスセットは買えない。いや、もらったばかりのお年玉をはたけば買えることは買える。しかし評論文の合間に見えてくる彼らの音楽は
・前衛的(分かりやすいメロディとか曲構成は期待できない)。
・反復性、催眠と覚醒何たらかんたら(曲の展開がない)。
・音楽とパフォーマンスの融合(音楽だけ聴いても理解できない)。
などなどの特徴。
ううむ。
こういうバンドに1万円を費やしてもいいのか。しかしFools Mateかぶれの中学3年生としては、何としても押さえておかなければならないバンドだ。そして何よりもロゴマークがカッコいい。TGの缶バッヂなどつけて歩いているひとを見たことがない。ステイタスだぜ。
ここは買うしか!
悩むことほぼひと月。結果的に買いました。レジで一万円札を渡すとき、ものすごく後戻りのできないことをしでかしているような気がしました。後悔とスリルの入り交じった、フクザツな気持ちでした。

・・・で、期待に胸を膨らませ、レコードプレイヤーに盤を乗せる。針を落とす。
・・・。
・・・むむぅ・・・。
ぽこぽこ。ぽこぽこ。
ぺこぽん。ぺこぱこ。エンエンとくり返されるリズムボックス。ふつうだったら4小節なり8小節なりに「たかたかとってん」とかフィルインが入るものだけど、それさえもない。チープなリズムボックスの音がずーっと鳴っている。その後ろで「ごー」とか「がー」とか言う効果音がときどき鳴る。ボーカルのジェネシス・P・オリッジとおぼしき男性のくぐもった声が何か英語でぶつぶつと聞こえる。メロディはない。コードもない。コード進行もない。曲構成もない。無機的なビートかエフェクタでゆがませた効果音がどこまでも鳴り響く。
ねむい。
たいくつだ。
例えて言うなら、「幽霊の声を録音したテープ」。
で。
それがボックスセット1コ分。アルバムにして5枚。
あたしゃ泣きましたよ。
恐ろしく期待していたのに、悪い方の予想が当たってしまった。やっぱ前衛だった。いや前衛でもいいんだけど、自分には理解できない音楽だった。なおかつそれに小遣いのありったけをつぎ込んでしまった。
あああぁぁ・・・。
ちなみに期待していた缶バッヂは、付いていませんでした。「缶バッヂ付き」と書いてあったのは洋盤屋さんの手書きの紹介文。ボックスセットの英文には「缶バッヂ付き」というような記載はいっさいなし。洋盤屋さんの勘違いだったか、誰かが抜いてしまったか。

その後、高校に入ってから懲りもせずにTGのメンバーのアルバムを購入する。ジェネシス・P・オリッジひきいる「サイキックTV」。こちらはTGに比べるとまだメロディがあったりわかりやすいビートがあって、多少は聴きやすかった。

sasha+john digweedの曲を聴いていて、ふと「これってTGじゃないか」と思った。21世紀のダンスミュージックと80年代アングラの奇妙な一致。
考えてみたら、TGが目指したものは「無機的な反復ビートと解体した音楽、メロディや音響が散乱するかのごとくに散らばった音楽。トランス状態と覚醒」じゃなかったか。で、それって90年代以降、テクノとかハウスミュージックが目指したものじゃなかっただろうか。
フィルインのないビートがえんえんと続き、引き裂かれたような効果音がゆっくり左から右へ流れていく。曲の味付けはループにかけられたフィルターの変化のみ。それってTGが試みた手法じゃなかっただろうか。
精神性や方法論で語られることの多かったTGだけど、彼らの文章やインタビューでは肉体にこだわった点も多かったように思う。精神性や方法論、前衛の中で、それでも彼らはダンスミュージックを作りたかったんじゃないだろうか。踊りたかったんじゃないだろうか。ただ当時の彼らの音楽は、呪詛のことばに満ちた、忌むべき音楽としてとらえれていたけれど。
久しぶりにTGを聴いてみようかな。
今度は踊れるかも知れない。

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