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2005年6月29日 (水)

吾妻ひでお「失踪日記」

吾妻ひでお。
知る人ぞ知る漫画家だ。
古くは少年チャンピオンに「やけくそ天使」を書いていたひと、あるいは「ななこSOS」のひと、と言えばいいだろうか。
「海から来た機械」などのふしぎなテイストの小品で、(アンダーグラウンドな)マンガファンやSFファンにカリスマ的な人気を誇る。キュートな美少女、べたつかないエロティシズム、そして何といってもセンス・オブ・ワンダーな浮遊感がよかった。凡百の漫画家と一線を画す、アタマの片隅にいつまでもこびりつく作品を描くひとだった。
ここ数年はシーンから姿を消し、すっかり「消えた漫画家」と化していたんだけど。

いやー。
最近出た「失踪日記」。
スゴイですよこれ。
スランプにおちいって失踪し、そのままほんもののホームレスになっちゃうというメチャクチャぶっ飛んだ実話マンガ。
お金が尽きて近くの雑木林に入り、寒さの中をぼろぼろのシートをひろってホームレスになっていくくだり、スゴイとしか言いようがない。ゴミを拾い、カビの生えたパンを食べ、ほかのホームレスの食べ物をかっぱらう。
で、次第に生活力(と言うのか?)がアップしてきてホームレス生活が徐々に豊かになっていく描写は、体験したものしか描けないリアルさ。絵それ自体は吾妻ひでおのポップなタッチなので悲壮感はないけれど、内容はとにかくスゴイ。

で、単行本の終盤、彼がアルコール依存症になって精神科に医療保護入院するくだりが描かれる。
その最後の最後の方で、AA(Alcoholics Anonymous)が描かれている。
おおっ!
かつてはその世界(どの世界だよ)で神と言われた吾妻ひでお先生にAAを描いていただけるとはっ!光栄なりっ!
で、内容はっ?!!
・・・。
・・・うーん・・・。
新興宗教チックなAAミーティングと、それになじめずに困っている吾妻先生が描かれております。
すし詰めの会場。
自己陶酔的で良く分からないメンバーの話。
ああ、きっとAAメンバーじゃないひとにとってのAAに対する印象って、こんな感じなんだろうなー。
まー、「神」と言う言葉も出てくるし、抽象的な概念も出てくる。
「酒をやめるのに、どうして神さまの話になるの?メンバーの専門用語もキモい」と思うひともいるだろうなー。
「神」と言う概念を出してくるのは、「そーゆー言葉を持ち出してくるのは新興宗教だ、うさんくさい連中だ」と言う先入観念を取り払ってくれれば、わりとすんなり飲み込める理由があるんですが。

でもとにかくおもしろいですよ、この「失踪日記」。
悲惨な内容を軽いタッチでギャグにしてしまうってのは、なかなかできないことだと思います。
いまはお酒飲んでないみたいだし、またおもしろいマンガを描いてくれるといいな。
ムリせずに、スローペースでいいマンガを描いてくださいね。
応援してますよー。

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