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2005年2月12日 (土)

1年のバースデイ

一年のバースデイ、おめでとう。
最後の酒から、一年も経つんですね。あなたがAA(Alcoholics Anonymous)にはじめて来てから数えると、1年と3ヶ月くらいになるでしょうか。
おめでとう。
正直、あなたがバースデイを迎えるのは厳しいだろうな。そう思っていました。あなたはミーティングでいつも、自分はアルコール依存症だとは思えないとか、いつかまた飲みたいとか、ことあるごとにそう話していましたものね。またAAに対する疑念や否定的な見解も、臆することなく表明していましたものね。
でもあなたは、けっしてAAから離れなかった。自分はアルコール依存症ではない、また飲みたいと言いながらも、AAに足を運び続けた。その原動力がなんなのか、ぼくには分かりません。仲間たちのあたたかい理解と共感のせいだったのかも知れない。身近な誰かの支えのおかげだったのかも知れない。クリニックのドクターに逆らう勇気がなかったせいかもしれない。それとも、ぼくには想像もつかない別の理由があったからか。でもとにかく、あなたはAAに来つづけた。スリップしても交通手段がなくなっても、AAに足を運びつづけた。
あなたが交通手段を失ったとき、ぼくはあなたがAAから離れていってしまうと思いました。あなたが仕事を始めたと聞いたとき、ミーティングからフェードアウトしていくだろうと予想しました。でもちがった。あなたはAAに来つづけた。飲みたいと言い、仕事がつらいと言い、自分は依存症なんかじゃないと言い、それでもミーティングに通い続けた。
ぼくはそれを見て、いつしかあなたに敬意を憶えるようになりました。「あの跳ねっ返り、すぐ来なくなるだろう」などとこころのどこかで思っていた自分を恥じました。つらいつらいと言いながらもAAに来つづけるあなたの姿に、次第に、ひとが病から回復していくときのポジティブなエネルギーを感じはじめました。
最初はどこをどう見ても頼りなく、病んだひとにしか見えなかったあなたが、飲まない日々が続くに連れてどんどん元気になっていく。エネルギッシュになっていく。疲れた投げやりな笑顔ではなく、楽しそうな屈託のない笑顔が浮かぶようになっていく。あなたはいまでも日々の暮らしがつらいと言い、飲んでいた方がましだと言う。でもそう言うあなたには、ストレスに耐えて生きていく力、アルコールに逃げずに素面で問題に取り組む力が、日に日に増しているように思います。自己肯定感が少ないのは、われわれの病気の特徴です。自分を大切にできない、自分が好きになれない。自分で自分を肯定できないから、他人の評価にひどく敏感になってしまう。ちょっとしたひとことで傷つき、感情が波立ってしまう。そしてまた、なにをやっても不全感におそわれ孤独を感じずにはいられないのも、われわれの病気の特徴のひとつです。どんなに評価されほめられても、さっぱり満足しない。束の間の満足を憶えても、すぐにまた落ち込み、何かが足りない感じがする。われわれの病気には、そういうふしぎな感覚がつきものです。でも仲間といっしょに回復の道を歩いていけば、それは解決していくんです。ぼくは、AAに来なければずっと自分が大嫌いなままだったでしょう。そして素面で大嫌いな自分と向かい合う勇気は、きっとぼくにはなかった。ぼくの中には、そんな勇気はまったくなかった。いまは多少ともそれがあると感じる。少なくとも、飲まずに日々の問題に取り組める。それは、AAの回復と仲間が、贈り物をくれたのだと思います。アルコールの海から救い出されたのみならず、AAはぼくに、大嫌いな自分と向かい合う勇気をくれた。それはAAでよく言う「値札のない贈り物」だと思います。ほんとうに、どんなにお金を出しても買えない、お金では得られない贈り物。
きっとあなたも後で振り返って、ぼくと同様その贈り物を受け取っていたことに気づくでしょう。そしてそのことを、あとから来た仲間に話すでしょう。おだやかに、やさしい口調で。その日が来るのを、ぼくはこころから楽しみにしています。
ハッピーバースデイ。お酒をやめて一年の誕生日、ほんとうにおめでとう。

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