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2004年12月23日 (木)

スノーボードとわたくし(1)

スポーツがだいきらいだった。
元々運動音痴の上に肥満児で、さらに小学校の時のトラウマ体験があったりして、身体を動かすと言うこと自体がきらいだった。さらに言うとスポーツマンとか体育の教師とか指導員といった人種もだいきらいだった。ぼくをドッジボールのコートに立たせた教師はもちろん体育教師だったし、中学に上がってからも体育の教師というのは理由なく生徒を威圧する、おそろしい存在だった。体罰は言うに及ばず、バリカンで頭髪違反の生徒の髪をむりやりそり上げ、生徒が隠し持っていたウォークマンを無数に巻き上げた。体育教師に巻き上げられたウォークマンは二度と戻ってこないという噂だった。彼らは体育館の一室を根城にしていた。やむを得ぬ事情でその部屋を訪れると、たばこの煙とラジオの音が響く中から威圧的な形相をした体育教師が怒鳴りながらドアを開けた。ほかの教師とは明らかに一線を画していた。理屈とか話し合いとか正当な理由とかがいっさい通じない、暴力的な存在だった。
運動ばかりに血道を上げている連中はろくなモンじゃない。当時のぼくはそうかたくなに思いこんでいた。じっさい、そう思いこむだけの理由が目の前にいくらでもあった。運動なんてしている時間があったら、一冊でも多くの書物にふれ、一曲でも多くの優れた楽曲を聴きたい。身体を動かしてもなんにも残らない。ずーっとそう思っていた。つい最近まで。

ぼくにスノボを提案してくれたのは、AA(Alcoholics Anonymous)のスポンサーだ。1年のバースデイが終わって少ししたころ。
「なにか身体を使う趣味を持つといい」と何かの折、彼は言った。身体を動かす楽しさを知ると良いよ。ぼくは「ええそうですね、そのうちやってみたいですね」とニコニコ相づちを打ちながらも、内心はまったくやる気はなかった。もちろんスキーに関しても、ぼくはイタい思い出があった。寒くつらいゲレンデで不自由な板に翻弄されてぶざまな姿を衆目にさらす。そんな気はさらさらなかった。

ところが。
彼女が、冬はスノボを楽しむという。何となーくスポーツをやるタイプに見えないこともなかったんだけど、まさかよりによってウィンタースポーツをするとは・・・。ぼくがスポーツ全般をいかに嫌っているか、せつせつと彼女に訴えた。さらに自分が体育教師やスキー教室でいかに痛めつけられたかを、ことさらに抑揚をつけて彼女に説明した。だいたい重力にしたがって上から下に「つー」と滑ることの、いったいどこがどう楽しいのか。こどもの滑り台と変わらないではないか。いい大人のやることではないではないか。われわれにはもっとほかにやるべきことがたくさんたくさんあるのではないか。下から見上げるようにヒクツな目線でせつせつと訴え続け、その結果。
「ふーん」と彼女はストローの袋をくるくるといじくりながら言った。「ま」。
「ま、やらないんだったら」別にどっちでも自分はまったく興味はない。そう言いたげに彼女はオレンジジュースをジルジルとすすり上げた。
「あたしは友だちと行ってくるけどね」
返す言葉が見つからず、そのまま待っていると彼女は鼻の頭をぽりぽりかきながらこう言った。
「その間はべつべつだね」

その瞬間、スノボ挑戦がケテーイ。
(゚∀゚)ラヴィ!!

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