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2004年11月 3日 (水)

シロガネーゼウォッチング!

今回の旅行はいくつか目的があった。そのひとつが「シロガネーゼとはいったいどういう人種なのか?」を探索することであった。
シロガネーゼ。白金台に居住すると言われている、ハイソでオッシャレーなご婦人たち。そのハイセンスさを形容する一方、「お高くとまっている」「庶民をなめている」「経済的に恵まれていることをひけらかしている」「イヤミったらしい」などなど、ネガティブなイメージも定着しつつある。それはどの程度事実なのか?ざあます言葉を駆使するイヤミなおばちゃんの現代版なのか?それともほんとうのハイソサエティなのか?一億総中流という言葉さえ死語になり、すべての階級が均質化しつつある現代に、そのようなハイソサエティは現存することは可能なのか?さまざまな疑問を解くべく、ぼくと彼女は白金台に向かったのであった。決して「シロガネーゼでも見に行くべよー」「わーおもしろそー」とノリ一発で出かけたわけではない。おのぼりさん気分丸出しで「わーいわーいシロガネシロガネシロガネーゼ」と喜んで出かけたわけではない。あー、そこんとこ誤解しないよーに。
白金台は東京の港区の一区画である。「しろがねだい」ではなく「しろかねだい」と読むようだ。わがATOK17でも「しろがねだい」では変換できない。山手線の目黒駅を降り、15分ほど歩く。大通りを歩いていくと、坂道の住宅街が見えてくる。「プラチナ通り」と呼ばれるオサレな通りの左右、坂の上手の一区画が、どうやら「シロガネーゼ」と呼ばれる人々の住処のようである。幹線道路から脇道に入り、丘の上の住宅街を探索してみる。人通りが少ない。日曜の朝10時だが、驚くほど静かである。最初、幹線道路から入ってすぐの辺りは小さい家々が多い。それでもベンツやBMWといった高級車が多いのはさすがである。緑が多い。クルマの往来もほとんどない。歩道にはゴミがない。おお高級住宅地。さらに坂道を上っていくと、どんどん住宅が巨大化していく。アパートはほとんどない。あっても瀟洒な「高級分譲マンション」と言った趣である。大手の建築会社が建てた巨大マンションのたぐいはひとつもない。コンビニもない。商店もない。飲食店もない。あってもこじんまりして趣味の良いパン屋とか、そんなもんである。ひたすら高級住宅が建ち並んでいる。「高い塀の家ばかり並んでいて排他的な印象じゃないか」とも予想していたが、思ったより開放的な印象だ。おお、この一帯ににシロガネーゼが居住しているのか?
と、散歩している女性発見!こっちに来る!犬を連れている!まさか新幹線で田舎から犬を散歩させに来ているわけがない。間違いない、シロガネーゼだっ!われわれはコーフンを押し隠し、さりげなく彼女とすれ違う。もちろん横目でしっかりウォッチングするのを忘れない。髪型。さりげないセミロング。少しウェーブがかかっている。年の頃は30代前半か。やせててすらっとしててモデルさんのようでもある。ジーンズに白の綿かガーゼのシャツ。靴は平たくて底の薄いもの。腕時計以外のアクセサリ類は身につけていない。こう書くとものすごく凡庸に思えるかも知れない。が。なんというか、たいへんゴージャスで品の良い感じである。ジーンズに白シャツ。ただそれだけなのだが、なにか圧倒されるような気品。整った顔立ちと薄い化粧が明らかにわれわれとは住む世界が違うことを物語っている。犬も、なんという品種か分からないが明らかに「さる血筋」であることを全身から漂わせている。この犬一頭だけでも相当な実力である。
ううむ・・。これがシロガネーゼか。。。ま、でもこの程度の美人、この程度の上品さならわれわれの地元でも、よーく探せばいないこともない。そう思ってさらに歩いていくと、またまた犬の散歩をしている住民を発見。今度は子ども連れだ。子ども。子どものくせにスゲーおしゃれな髪型である。「芸能人をまねしました」風ではなく、なんというか、シックな中にも上品さが際だつような、何ともいえない髪型である。服も、明らかにぼくの洋服の上下よりも金がかかっていそうなTシャツである。母親の方もやはり基本はシンプルなのだが、何かぼくの住む世界とは根本が違っているオーラを放っている。すれ違いつつ、上から下までなめるようにじろじろと観察するわれわれ。ううむ。ううむ。聞きしにまさるゴージャス感。それでいて清潔な印象。まったくの他人であるが「ちょっとそこの荷物おろしてちょうだい」と言われたら「はいっ!」と叫んで喜んで従ってしまいそうな気がする。
さらに散策を続ける。イヌ率高し。犬、本の中でしか見たことのない高級種ばかり。住宅。とにかくでかい。広い。高級車がずらりと並んでいる。出かける前に「三歩歩くたんびにベンツが停まってるんだよ、きっと」など冗談を言っていたが、ほんとに。ほんとーに。ほんっっっとに!三歩歩くたびにベンツが停まっているのである!
ベンツ。Sクラスは当たり前。Eクラスかそれ以上もばんばん並んでいる。あとはBMW。意外に多いレンジローバー。なぜかアウディは少ない。ポルシェ。ポルシェのランドクルーザーみたいなのって初めて見たよ。ジャガー。ローバー。アルファロメオ。ちょっとした高級外車の品評会だ。ときおり、それらのクルマを運転しているシロガネーゼともすれ違う。でかいレンジローバーを運転するセミロング・モデル体型・シックでシンプルなファッションのシロガネーゼはものすごく優雅である。
うーむ。すごい・・・。まさか白金台、ここまで非日常な人々が居住しているとは。。。
感心したのは、ヤン車が一台もなかったこと。エアロパーツをばりばり装備してクマプーを山のように後部座席に搭載した真っ黒いクルマは、一台も通行していない。天守閣のようにリアウィングを天高く羽ばたかせたスポーツカーも見かけない。道行く人びとはみなモデルのようにすらっとしていた。太目のひとは、ついに見かけなかった。過度な金髪、チャパツもいなかった。アイシャドーやアイラインをばりばりに塗ったくった方もいなかった。
でも。「こういう生活を演出してまーす」的な力みは感じなかった。自然体。ほんとーに生まれたときから大金持ちで高級住宅地に住んでいて、ハイソな生活様式が自然に身に付いている。そんな生き方をしているように思った。
うらやましいか?うーん、ちょっとだけうらやましい。きっとこの人たちは大邸宅も高級犬も高級外車も、生まれたときから当たり前の世界に生きているんだろう。でもだからと言って彼女たちがぼくよりもはるかに幸せだとは思わない。ぼくはぼくで、いまの生活に満足している。感謝している。シロガネーゼの世界に突然放り込まれても、勝手が違ってきっとうまく適応できないだろうな。大邸宅で何がやりたい?と自問してみても、防音がしっかりしたスタジオを作りたい、くらいしか思いつかないし。大邸宅の広い庭も芝生も植え込みも高級犬も、きっとぼくにはうまくなじめないだろうなー。や、犬は性格が良ければいいか。シロガネーゼたちはシロガネーゼたちで、きっといろいろ悩んだり苦労したりしているんだろうね。厳しくてプライドの高い一族だと、きっと嫁姑なんてたいへんだろうね。それとも、苦労もトラブルも、ぼくなんかには想像もつかないようなことなのかも知れない。ベンツ。レンジローバー。ぼくには一生かかっても手に入れられないモノをなんの苦労もなく手にしている人たち。でも、たとえばぼくが学生時代に食費を削って買ったギブソンのギターとどっちがいい?と聞かれたら、ぼくは迷わずギターを取る。物質の価値は交換可能だけど、それをめぐる気持ちや思い入れは交換できない。ましてや、われわれはひととひととの出会いの中で成長していける。白金台に住む人びとと自分を比較してどっちが良い生き方かなんて誰にも分からない。われわれの人生が交換不可能なように、人生の価値もまた交換不可能なんだ。
それにしても、世の中にはこういう世界が実在して、こういう人たちが実在しているんですね。いやいや白金台。おもしろかった。つかの間の非日常体験でした。
また機会があったら行ってみようっと。今度は高級犬の知識も仕入れてね。

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