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2004年10月18日 (月)

ここ、そしてここじゃない場所

前にも書いたが、部屋が手狭になってきた。2DKで狭いなどとほざくのはいささかゴーマンだと思う。ぼくだってほかの人間がひとり暮らししてて「2DKが狭くってねー」なんて言っていたらちょっといかがなものかと思う。でもじっさい手狭なんだからしょうがない。結婚生活の残骸というか、失敗のモニュメントともいえる大型冷蔵庫。4人がけのテーブル。欲しくて欲しくてたまらなかったソファ。そして。ああそして楽器およびDTM関連の機材の数々。もちろん整理するけれど、彼女との将来も考えたらもっと広いところに引っ越したい。どこか良いアパートはないものか。できれば家賃はあんまり高くなく、いま住んでいるところからそう遠くなく、新築で広いところ。そう思って不動産をあちこち見ていたんだけどあまり食指を動かされるものはなく、なおかつ不動産屋の疲弊しきった対応にこちらも疲れて。しばらく不動産屋めぐりはおやすみしていたのでした。まーいまのところでも何とか住めないこともないだろう。そう思ってアパートのことは忘れていたのでした。そしたらある日、ふたりで散歩の途中。なんとアパートから徒歩3分のところに新築アパートが建つじゃないの!聞いてみたら、いまのアパートと同じ不動産の管理。そこからとんとん拍子に話が進み、11月のオープンと同時に入居が決定しました。
やった!
考えてみたらいまのアパート、以前つきあっていた女性から逃げるように越してきたのが2年前の初夏。長く住んでいたように感じたけど、じっさいは2年半足らず。うーん、いろいろなことがあったなー。しみじみ・・・。

ここから出て行こう。ここから出て行こう。ここから出て行くんだ。
前はいつもそんなことばかり考えていたっけ。行くあてもない。どうして行きたいのかも分からない。ただやみくもに、ここじゃないどこか、いまと違う場所に行きたいと思っていた。違う場所で違う暮らしをしたかった。みすぼらしく色あせた風景、見慣れた日常がガマンならなかった。田舎町、古い文化住宅や朽ちかけた工場跡、夜道を照らすみすぼらしい街灯。そんな風景に自分が埋没していくのがたまらなくイヤだった。ここにいると自分の中の何かたいせつなものが腐っていってしまう。溶けて流れていってしまう。ぼくはぼくが生まれ育った町で年老いて死んでいくのはイヤだ。「ガロ」の漫画みたいな暗い風景の中で死んでいくのはイヤだ。どこかここじゃない場所、ちがう場所、お願いだからどこか、どこか、どこか、どこか。

そんな風に願っていたころ、そしていま。相変わらずぼくは自分が生まれ育った町で生活している。バイパスができ、大型ショッピングセンターができた。町中の古い住宅はどんどん取り壊されて駐車場に変わっている。まるで歯が抜け落ちて行くみたいに。おしゃれなお店や若者もそれなりに増えた。その代わりガラの悪い連中やうるさい改造車も増えた。特徴のない典型的な中小の地方都市に変わってしまった。ぼくは相変わらずこの町で暮らしている。ギターはちっともうまくならないしバンドもご無沙汰している。時間だけがあっと言う間に過ぎていき、何もしないまま年齢が増していく。ちょっとびびるくらいあっと言う間に。
でもぼくはもう、どこかに行ってしまいたいとは思わない。ここじゃないどこかへ行ってしまいたいとは。あのオブセッション、やみくもな衝動はきっと、ぼく自身の不安の鏡像だったんだろう。チャンスもないまま埋もれていってしまうんじゃないか。年をとってぼくの嫌いな連中と同じになっちまうんじゃないか。親と同じ人生になっちまうじゃないか。不安といらだちが、ここじゃないどこかへ行きたいというあこがれと共にぼくを突き動かしていたんだ。
ぼくはいま、この町で暮らしていこうと思う。不安もいらだちも、ここじゃないどこかへ行っても消えやしない。だってそれは、ぼく自身の内側にあったものだから。いまもどこか不安はある。あのころの自分自身に揺り起こされることもある。でも、少なくともいまは、それが自分の内側の問題だと言うことに気がつけるようになった。アルコールの海から死にかけではい上がってきて、AAにつながって3年近く経って、ようやく。

夕暮れ、新しいアパートを見に行った。まわりは畑とも雑草地ともつかない小高い藪だった。舗装していない道路をクルマが一台、埃を巻き上げながら走り去っていった。クルマが行ってしまったあとは、夕日の中で雑草が揺れているだけだった。ぼくはそれを見てきれいだと思った。美しいと思った。笑っちゃうくらいの田舎町、笑っちゃうくらいのちっぽけな暮らし。でも、これでいいと思う。
これでいい。

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コメント

そうそう!どこで暮らそうとも、自分次第かもねー。でも、
とび出すもよし。とどまるもよし。私も街を出たくてしょうがなかったな〜。結果的には、出てみて良かったけど。
人との出会い次第で、街への気持ちも変わっちゃうので不思議です。
力作だったね☆


投稿: 田舎MuSume | 2004年10月19日 (火) 23:30

Congratulations!
It is important to say good-bye to old furnitures, old clothing, and old memories,
I think.

Please get a new wonderful life with new furnitures ! It is necessary for you,
especially for her.

I wish I had a plan of new wonderful life...(^^)

投稿: pao | 2004年10月20日 (水) 09:12

paoさん、いつもありがとうございます。田舎MuSumeさん、はじめまして。新しいアパート、11月から入居可って話なのにまだぜーんぜんできていないんですよ。台風の影響もあるんじゃないかと思いますが、それにしてもゆっくり。新しいアパートに期待する反面、引っ越しの苦労を考えると頭痛が・・・。
苦あれば楽あり、楽あれば苦ありですねー。新しい家具、ほしいッス。前の奥さんが持ってきた家具にそろそろさよならしないとね。paoさんにも良い新生活が訪れるといいですね。

投稿: カオル | 2004年10月22日 (金) 22:59

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