硬派のネット記事〜音楽の値段〜
このブログを含めて、ネットには膨大な量の文章があふれている。
そのほとんどは人の目に触れず、触れたとしてもすぐに消費され、忘れられていく。
書き手も自分の文章がそんな風に扱われているのを承知の上なのか、あんまり気合いが入っていないことも多いような気がする。とくにネットやIT関連の記事は無味乾燥で、「伝えたい」という気迫が行間から伝わってこない。
そんな中、久しぶりに硬派な記事を読みましたよ。
ユーザー置き去りの著作権攻防戦
まずはこの記事を書いたライターと、掲載を許可したAsahi.comに拍手。
なぜiTunesミュージックストアが日本で始まらないのか、から始まって、CCCD(コピーコントロールドCD)の問題、音楽業界の著作権に関する利権にまで踏み込んでいる。
いやー、知らなかったです。CCCD、Windowsに突っ込むと勝手にOSのレジストリを書き換えるんですね。
たかがCD一枚が、ユーザのパソコンのプログラムを、なんの断りもなく書き換えて良いはずがない。
そもそもユーザの断りもなくレジストリを書き換えるのって、ふつー「ウイルス」でしょ、それって。
ユーザのパソコンに勝手に正体不明のプログラムを仕込んでおきながら「このCDを挿入していかなる事故が起きようとそれはユーザの自己責任です」って言うのは傲慢だよねー。
CDの規格から外れている上に再生機器に負担をかけて寿命を縮め、音質も悪いCCCD。
結局、ギョーカイがどうしてそんなことをするのかと言えば「金を払ってないヤツはうちの商品を聞くな!」という主張でしょ。
でもそもそも、輸入盤に比べて邦盤は値段が高すぎ。値段が高いからミュージシャンの生活が潤っているわけでもなし。レコード会社の取り分なんでしょうね。
日本だけじゃなく、アメリカでもこういう動きは出ているみたい。
はてなダイアリー 町山智浩アメリカ日記のバックナンバーにもあるように、誕生日の時に歌う「ハッピーバースデイ」にも著作権がかけられて、この歌をパブリックに引用するときには著作権使用料を支払わないといけない。
町山さんが書いているとおり、映画や音楽などで「ハッピーバースデイトゥーユー」と2回繰り返しただけで、そこに著作権が発生する。誕生日おめでとうと言っているだけなのに。そりゃあおかしい!
でも今回の記事を見る限り、日本の音楽業界はもっとひどい。
俺たちの商品を聞きたければとにかく金を払え。払わないんだったらパソコンをはじめ、ありとあらゆるCDドライブに著作権使用料を課すぜ。だってCDドライブがあるってことは俺たちの商品を使うってことだろ。だから音楽を聞く前にあらかじめ再生機器に使用料を上乗せしておくぜ。
コピーはいっさいするな。カセットにもコピーするな。いっさいの音楽をコピーするな。コピーしたくてもできないようにCDに細工をしてやる。ウイルスを仕込んでやる。それでパソコンが壊れようが知ったことか。高価なCDプレイヤーがぶっ壊れようが知ったことか。音質が下がろうが知ったことか。ほっとくと俺たちの商品をコピーしはじめるおまえらが悪いんだからな!
・・・音楽ってさー。
もっと自由なものでしょう。
記事にもあるように、だれでも学生時代、友だちに好きな曲を録音してもらったこと、あるでしょう。
自分の好きな曲を集めてプレゼントしたことあるでしょう。
その結果、音楽業界が滅亡したわけではないでしょう。むしろ音楽を愛する人々が増え、より多くのユーザが広がったと思うんだけど。
想像してみよう。もしも音楽の複製が、カセットも含めていっさいできない世界になったら。
中学生。一ヶ月の小遣いは3千円。
洋盤なら2枚買えるけれど、邦盤なら1枚買えばおしまいだ。
ネットであらゆる情報を調べて、どのCDを買うか慎重に調べる。
コピーがいっさいできないから、ひとから借りるわけにはいかない。友だちから借りてもコピーできなければ、自分の時間でじっくり聞くことができない。そもそもコピーが禁じられた世界では、友だちもみんなそれほど音楽CDを持っていない。ネットの試聴もサビ前までなので、曲全体のイメージはつかめない。
好きなアーティストの新作を何枚か慎重にリストアップする。
一ヶ月の小遣いのありったけを投入してその中の1枚を買う。
はずれ。
シングルカットされた1曲以外は、中学生の耳にもあきらかに「アルバム用の捨て曲」と分かる出来だ。
ガッカリする。音楽CDなんて買うんじゃなかったと思う。もっと安価で安全な娯楽にお金を使おう。そう思う。
そして優秀なミュージシャンになれたかも知れない中学生はビデオゲームやケータイにお金と時間と労力を費やすようになる。
音楽業界が作ろうとしているのはそう言う世界だ。
ミュージシャンもユーザも育たない世界だ。
iTunesミュージックストアもダメ。CDも高価。世界の相場の2倍くらい。高価な上にCCCD。再生機器もCCCDによって早めに壊れる。
そうやって強欲にお金を集めた結果、ミュージシャンをきちんとフォローしているのかと思えば、少なくともぼくが知っている範囲のセミプロは、みな口をそろえてレコード会社は冷たい、当てにならない、売れないアーティストには仕事も回さないし宣伝もしてくれないと、そう言っている。
ユーザに負担を強いる一方、メガヒットアーティスト以外は切って捨てるレコード会社。
愛がなくっちゃね。愛と想像力。
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